【作品#0425】エルヴィス(2022) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

エルヴィス(原題:Elvis)


【概要】

2022年のアメリカ映画
上映時間は159分

【あらすじ】

42歳の若さでこの世を去ったロック歌手エルヴィス・プレスリーの生涯を描く。

【スタッフ】

監督はバズ・ラーマン
脚本はバズ・ラーマン/クレイグ・ピアース
撮影はマンディ・ウォーカー

【キャスト】

オースティン・バトラー(エルヴィス・プレスリー
トム・ハンクス(トム・パーカー大佐)
オリヴィア・デヨング(プリシラ・プレスリー)

【感想】

42歳の若さでこの世を去った伝説のロック歌手エルヴィス・プレスリーの伝記映画。エルヴィス・プレスリーを演じたオースティン・バトラーは、自身の母親とエルヴィスの父親バーノンに共通の祖先がおり、エルヴィス・プレスリーと遠縁にあたる。

本作はまさに「怒涛」のような映画である。本作の中にも「怒涛」というセリフが登場する。42歳という若さでこの世を去ったエルヴィス・プレスリーの生涯をてんこ盛りの情報で描く159分はまさに怒涛である。画面を分割したり、細かくカットを割ったりと全部の情報をじっくり見せるつもりはない。絢爛豪華な映像はバズ・ラーマン監督らしく、とにかくエルヴィス・プレスリーが送った短い生涯を示すかの如くほとんど休むことなく159分が過ぎて行く。

本作を見て思い出すのは「アマデウス(1984)」である。「アマデウス(1984)」はモーツァルトと彼の才能に気付きながら嫉妬したサリエリを描いた映画であり、晩年のサリエリがモーツァルトとの日々を回想する映画であった。本作も晩年の大佐がエルヴィスを発掘してから死ぬまでを回想する形で描いている。あくまで大佐視点で語られる物語であり、エルヴィスがどう行動していくかは大佐には分からないようになっている。

エルヴィス・プレスリーはラストの墓に刻まれた文字からも分かるようにエルヴィス・アーロン・プレスリーであり、アーロンというミドルネームがある。このアーロンはユダヤ系の名前であり、母方の遠い親戚がユダヤ人である。エルヴィスの少年時代は南部のテネシー州メンフィスで過ごしている。キリスト教プロテスタントの家庭で育ち、ゴスペルというプロテスタントの宗教音楽を見に行く場面がある。彼の音楽のルーツについても描かれる。プレスリーで一番有名な楽曲と言っても良い「ハウンド・ドッグ」もビッグ・ママ・ソーントンのブルースがオリジナルである。

トム・ハンクスが主演した「フォレスト・ガンプ/一期一会(1994)」の序盤にフォレスト・ガンプの家に若き日のエルヴィス・プレスリーが来て「ハウンド・ドッグ」を教えるという場面がある。その際にエルヴィスの声を吹き替えているのはカート・ラッセル。また、後の場面でテレビ番組にエルヴィス・プレスリーが出演している場面もある。また、トム・ハンクスが主演した「キャスト・アウェイ(2000)」では、エルヴィス・プレスリーの楽曲が4曲流れ、エルヴィスに関するセリフや監獄ロックのポスターが映る。

本作ではキング牧師もロバート・ケネディもシャロン・テートも殺された。有名人が次々に殺される現実を目にして、エルヴィス・プレスリーもいつか殺されてしまうんじゃないかという恐怖と戦っていた。さらには大佐が警備について口酸っぱく言っていたこともあって、ついにエルヴィス・プレスリーは薬に走ってしまう。ちなみにシャロン・テートが登場する「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019)」にオースティン・バトラーは出演しているし、かつてエルヴィス・プレスリーの伝記映画「ザ・シンガー(1979)」で主演したカート・ラッセルも出演している。

復活を遂げてショーの成功を収めたエルヴィスは海外公演を望むようになる。多くの歌手やバンドが世界公演をする中、エルヴィスもそれを求めるようになるのは不思議ではない。帯同すれば再入国できなくなる大佐はそれを意地でも阻もうとする。多くの有名人が暗殺されて警備の重要性を訴えて、衛星放送によりコンサートを中継できる技術が整ったことが大佐に味方してしまう流れはあまりにも不埒である。

終盤にバーブラ・ストライサンドの「スター誕生(1976)」の話が出てくる。「スター誕生」は元ネタも含めると、この「スター誕生(1976)」が4度目の映画化で、後にブラッドリー・クーパー監督の「アリー/スター誕生(2018)」で5度目の映画化がされた古典中の古典である。バーブラ・ストライサンドはノーマン役にエルヴィス・プレスリーを望んでおり、1975年にはラスベガスでエルヴィス・プレスリーに会っている。エルヴィス・プレスリーも乗り気だったが、バーブラ・ストライサンドが大佐の前にエルヴィス・プレスリーに会ったということに大佐が腹を立てて、クレジットの位置の指定や高額のギャラを要求したことで断念した(この役はクリス・クリストファーソンが演じた)。さらに、エルヴィス・プレスリーは1969年を最後に映画出演をしていなかった。ちなみに本作ではエルヴィスの映画出演に関する場面は割と足早でなかったことにしたい歴史なのかと思わせるところはある。

決してエルヴィス・プレスリーのことを知らなくても楽しめる構造になっていた。彼の楽曲をあれもこれも流すのではなく、キーとなる何曲かを複数回流すという構成も効果的だったと思う。バズ・ラーマンはどこか苦手な監督だったが、これほどパワフルな作品を撮るとは思わなかった。




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【予告編】

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典

├メイキング・オブ・エルヴィス
├歌唱シーンの舞台裏
├キングの衣装
├オーストラリア万才
├ミュージックビデオ「トラブル」
├パフォーマンス・シーン

 

<4K ULTRA HD+BD>

 

収録内容

├上記BDと同様