【作品#0145】グラン・ブルー(1988) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

グラン・ブルー(原題:Le Grand Bleu/英題:The Big Blue)

 

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

 

1988年のフランス/イタリア合作映画

上映時間は132分

※完全版は168分

 

【あらすじ】

 

イタリア人フリーダイバーのエンゾは、幼馴染のジャック・マイヨールを探し当てて、フリーダイビングの大会に出るように誘う。その会場にはジャックがペルーで知り合ったアメリカ人女性のジョアンナもやって来ることになる。

 

【スタッフ】

 

監督/脚本はリュック・ベッソン

音楽はエリック・セラ

撮影はカルロ・ヴァリーニ

 

【キャスト】

 

ジャン=マルク・バール(ジャック・マイヨール)

ロザンナ・アークエット(ジョアンナ・ベイカー)

ジャン・レノ(エンゾ・モリナーリ)

 

【感想】

 

フランスでは社会現象を巻き起こすほどの異例の大ヒットを記録した伝記映画。日本では公開当時全く当たらなかったが、フランスでの盛り上がりが伝わり、ビデオ発売後に人気をじわじわ得て、1992年に完全版が公開されてようやく劇場でヒットした。

 

当初はリュック・ベッソン監督が知人経由でウォーレン・ビーティに本作の企画を持ち込んで前金を貰ってロケハンまでしていたが、なかなか返事が来ないでいると、実は本作の権利がウォーレン・ビーティに移管していることに気付いていなかった。その後、フランスの映画会社ゴーモンを通じて前金の返金と謝罪をしたことでフランスで映画化に向けて動き出すことのできたという逸話がある。それがあってか、下記の通りアメリカ公開時に本作は酷い目に遭っている。

 

まず、本作は映画自体のルックが非常に美しく、場面と場面の移り変わりの度に映る海のショットに惚れ惚れする。モノクロの海、昼の海、夜の海、それぞれに趣があって良い。

 

また、エリック・セラによるサントラも素晴らしい。映画の世界に引きずり込むオープニングに流れる音楽、イルカの声を模したような音楽、コミカルで呑気な音楽、ラブシーンで流れるスリリングさを感じる音楽、そしてラストでジャックが海に潜る直前から流れ始める音楽と、どれをとっても美しく、本作を構成する要素としてかなり大きなものがあり、本作はこのエリック・セラによる音楽抜きには語れないほどの魅力がある。

 

ストーリー自体は至ってシンプルで登場人物も3人しか登場しないが、ギリシャ、フランス、イタリア、アメリカ、ペルーと世界を股にかけ、「海」というとてつもなく大きな存在を描く本作として少なくともこじんまりした世界観ではない。そして、ジャックに惚れたジョアンナは、ジャックが魅せられた「海」という大きな存在の前に妊娠したというのに何もすることができない。

 

ジャックは少年時代に潜水時の事故で父親を亡くし、母親はアメリカへ行ってしまった。おじさんから「お前の母親はイルカになった」と言われて育っており、そのアメリカから来たジョアンナが「イルカみたいな顔をしている」から恋に落ちる。ジョアンナが魅力的な女性だったからではないというところが微妙なところ。また、寡黙でエネルギーが基本的に内に向いているので捉えどころがないところはミステリアスで魅力となっている。

 

エンゾは割と分かりやすいキャラクターである。ジャックと対照的に威厳のある母親がいて反抗することはできない。また、明るく饒舌で周囲には友人もたくさんいる。

 

そしてジョアンナが分かりやすいようなわかりにくいようなキャラクターである。いくら一目惚れしたからと言ってアメリカからイタリアにやって来るなんて非常に行動的である。ジャックと結ばれる場面でもジョアンナが体が上になっているところも象徴的だ。ただ、ジャックはその後イルカと海で一晩過ごしており、ジョアンナからすれば他に女を作ったと感じても仕方ないようになっている。ジャック同様自由気ままについてきたジョアンナだが妊娠すると話は変わって来る。聞く耳を持たないジャックに対して、彼のホームグラウンドである海に飛び込んでまで告白するが思いは通じない。

 

ラストのジョアンナのセリフは誤訳だとよく言われる。「Go and see my love」と言っているのだが、実は「Go and see, my love」で「,」が入っており、「行って見てきて、私の愛する人」といった意味になるらしい。ジャックが愛する海やイルカに自分が敗北を喫して諦めるという悲しいシーン。エリック・セラの音楽の流れ出すタイミングと言い見事なシーンである。

 

そういった意味で本作は非常に悲しい物語でもある。監督のリュック・ベッソンがイルカの学者になるべくスキューバダイビングをしていたが、ドクターストップにより潜水できなかった思いを本作に憑依させたと考えると納得がいく結末である。

 

TOHOシネマズの企画した「バック・トゥ・ザ・シアター」で完全版を、「ドルフィン・マン ジャック・マイヨール、蒼く深い海へ」公開時のリバイバルでオリジナル版をそれぞれ映画館で鑑賞できた。本作は特に没入感が大事なので家で見るにしても暗くして良い環境で観ることをお勧めする。

 

【バージョン違い】

 

「フランス公開版」…上映時間132分。元々は国際市場向けに作られており、セリフはすべて英語である。ところが国内向けとして公開することになったため、後に演者がフランス語で吹き替えている。

「国際版」…上映時間120分。上記バージョンを編集して日本を含む国外向けに後悔したもの。かつてスチールのケースで発売された3枚組DVDセットには収録されている。

「アメリカ公開版」…上映時間118分。音楽をエリック・セラからビル・コンティに差し替え、ラストに1カット追加している。

「完全版」…上映時間168分。リュック・ベッソン監督が最初に完成させたバージョン。

 

【関連作品】

 

「ドルフィン・マン~ジャック・マイヨール、蒼く深い海へ~(2017)」…本作のモデルとなったジャック・マイヨールについてのドキュメンタリー映画。ジャン=マルク・バールがナレーターを務めた。

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

本編

├完全版
言語
├オリジナル(英語/フランス語/イタリア語)

 

【ソフト関連】

<BD>

本編

├フランス公開版
言語
├オリジナル(英語/フランス語/イタリア語)

├フランス語吹き替え

 

<BD>

本編

├完全版(Disc1)

├フランス公開版(Disc2)
言語
├オリジナル(英語/フランス語/イタリア語)

├フランス語吹き替え

映像特典(Disc3)

├メイキング『グラン・ブルー』の世界~映画『グラン・ブルー』はこうして作られた

封入特典

├解説カード

 

【音楽関連】

 

<CD(2枚組/サウンドトラック)>

 

収録内容

├33曲/87分

 

【グッズ関連】

<ポスター>

サイズ
├68.5㎝×101.5cm