徒然なる枕草子VII 45「伝えたい事」(心の中へ483) | isaoのブログ

06:14
07:11
一週間ほど前に、面接を受けた会社からの
採用通知が届いていた。
そして翌日、私は事務長に退職する旨を伝えた。
今から40年以上前の事、
当時私はまだ入社したての小僧だった。
毎日課長に付いて運転をしながら
様々な事を教わっていた。
課長は忙しく、彼のポケットベルは
常に鳴り続けていた。
そんな或る日、課長が
長良川の堤防道路で車を止める様指示した。
二人は車を降り、清涼長良川の
せせらぎが聞こえる所まで堤防を下った。
すると課長はいきなりベルトを緩め
鳴り続けるポケットベルを外し
手にすると、
それを川の流れに向かって放り投げたのだ。
一瞬の事だった。
「ピーピーピー」とヒステリックに鳴る音は
空で次第に遠ざかり
川面に激突すると同時にパッと鳴き止んだ。
そして彼は私に言った。
「今日で会社を辞める!」
私は心臓が躍り出すほど驚き、そして動揺した。
続いて彼は言った。
「その日で会社を辞められる
魔法の台詞をお前に教えてやる。」
課長はその時、私より30歳ほど歳上だったから
彼はきっともう存命では無いだろう。
私は今回、あの時彼に教わった
「魔法の台詞」を使わせてもらった。
事務長は無言で頷き、
私を紳士的に会議室から送り出してくれた。


幕は突然降ろされて(心の中へ483)
06:14
07:27
悲しみを一人で耐え忍び乗り越えていく術は
もう既に知っている。
彼女を失ってから、もう何度も経験して
辛い日々を通り過ぎて来ている。
だけど、掴んだ喜びを誰かと分かち合えない
無限の孤独さを跳ね返す強さを
私はまだ培ってはいない。
そんな時は頬を熱い涙が流れ、
込み上げて来ていた筈の喜びは
いつしか悲しみへと変わっており、
遂には堪え切れなくなって
布団の中に頭を突っ込んで号泣して終わるのだ。

今回も同じだった。
どうかこの会社が私の終の職場になります様に!