「京子さん入りまーす!」
 
 
「おう!久しぶりだな。
キュララから……2年か。」
 
 
「ご無沙汰しています。黒崎監督。
今日はよろしくお願い致します。」
 
 
キョーコは深々と頭を下げた。
 
 
「お前もついにここまで来たかぁ!
クロユニのCMが来るたぁな!」
 
 
「私も驚きました。
いつも話題になるCMですので、私も精一杯頑張ります。」
 
 
「おう!頼んだぞ!」
 
 
キョーコは再びぺこりと頭を下げると、指定された位置についた。
 
白い砂浜の上にポツンと建つ小さなリゾートハウス。
ヤシの木の間を時折爽やかな海風が吹き抜けていく。
 
その場所で撮影を始めるのは、クロユニの夏物CM。
 
クロユニの今シーズン一押しの白いレーヨンシャツを身に纏ったキョーコは、黒崎に指示されるがままに、ゆっくりと歩いたり、元気にジャンプをしたり、青空を仰ぐように振り向いたり、色々な動きをしていった。
 
何パターンか動作の多い動きを撮影した後、今度は静止画に近い撮影をするため、引き締めた表情で壁に凭れ掛かる。
 
そこでも何ポーズか撮影をし、次に黒崎が指示をしたのは……
 
 
「京子、んじゃ今度はブラの方も撮っていくから、ゆっくり一番上から前ボタンを開けてくれ。」
 
 
キョーコは、言われた通り、俯きながらゆっくりとボタンを外していく。
全て外し終えると、中に身に付けていたのは、今までのクロユニの代表作とも言えるトップブラに変わり、新作として発売することになったレスワイヤーブラ。
 
ワイヤーがなくとも特殊加工によってワイヤーと同じ効果があり、尚且つ締め付けから解放されるというクロユニ渾身の新商品だ。
 
キョーコは、髪をかき上げながら強く吹く風を全身で受けとめ、全開となったレーヨンシャツがたなびいてブラが露になったその時ーーー
 
 
「あれ?敦賀クンじゃねぇか、もう来たのか。」
 
 
「おはようございます、黒崎監督。」
 
 
「話に聞いてた通りの無遅刻なのはいいけど……、メンズの撮りはまだまだ後だぞ?」
 
 
そう言われ撮影場所に目を向けた蓮は、思わず目を見開いた。
 
同時にキョーコも目を丸くし、フリーズしていた。
 
咄嗟に口元を覆い、目を背けた蓮。
 
するとキョーコは開いたシャツを閉じながら慌てて駆け寄ってきた。
 
 
「おはようございますっ、敦賀さんっ。」
 
 
「あ、あぁ。おはよう、最上さん///」
 
 
そんな二人のやり取りを一部始終見ていた黒崎は閃いた。
 
 
「そうだ。急遽予定変更で悪ぃんだけど、メンズとレディース合わせたのも撮ってみるか。
せっかく敦賀クンも早めに入ってくれたんだしな。」
 
 
ポンと蓮の肩を叩くと黒崎は急いで蓮のスタイリストを呼びに行った。
 
 
「あのっ……、メンズって敦賀さんだったんですね。」
 
 
「ん?あ、あぁ。」
 
 
蓮は上の空で色々なことを想定していた。
まずは、勘の良さそうな黒崎にこの一瞬で自分のキョーコに対する気持ちがバレたかもしれないこと。
それから、目の前にいるキョーコがレスワイヤーブラの撮影中であることから、今までのクロユニのCMの傾向を考えると、恐らくかなり際どい撮影があるかもしれないこと。
それに自分も参加するということはーーー
 
 
「あのっ///
私、変ですか……?」
 
 
キョーコは挨拶から一向に目を合わせてくれない蓮の様子に、自分のクロユニの着こなしがおかしいのかと不安になっていた。
 
蓮は口元を覆ったまま間近にいるキョーコを上から下まで眺めると、
 
 
「いや、綺麗だよ。すごく……」
 
 
「…………/////」
 
 
久々の神々スマイルに浄化されかけたキョーコは、黒崎に呼ばれて再び撮影位置に戻った。
 
 
「るぇぇん、良かったな。早く来て。」
 
 
隣でニヤニヤと喜んでいる社を無言でやり過ごすと、蓮は一先ず待機場所へと腰掛けた。
 
するとそこでキョーコのスタイリスト達が話している声が聴こえた。
 
 
「…………うん、大丈夫よ、ちゃんとキョーコちゃん、トップには貼ってあるからー。
うん、見えちゃうことはないわねー。」
 
 
それを聞いた蓮は、少し残ne……いや、ホッとした。
 
 
それからキョーコ単独の残りのカットを撮り終えた後、いよいよ急遽取り入れられることになったキョーコと蓮の絡みの撮りに入る。
 
最初は、二人で並んで歩いたり、ベンチに座って談笑したり、何てことはない日常的な様子から撮っていく。
それぞれメンズとレディースのお揃いの白いレーヨンシャツを来て、下には蓮はストレッチジーンズ、キョーコはホットパンツというラフなスタイルで、クロユニのカジュアルなイメージを作り上げる。
 
 
「よーし!
んじゃお二人サン、そろそろ手でも繋ごうか。」
 
 
黒崎の指示が入り、キョーコは一瞬緊張な面持ちを見せた。
 
 
「…………最上さん。」
 
 
蓮がそっと掌を差し出すと、その手をじっと見つめてからキョーコは自身の掌を乗せた。
 
 
「おーい!京子!
そんなに緊張すんなー!何も最初っからチューしろとか言わねーからよ!」
 
 
あははっと大声で笑う黒崎。
 
 
「すっ///すみませんっ!!」
 
 
~~~~///
 
落ち込んだ様子のキョーコを見て蓮は耳元で囁いた。
 
 
「大丈夫だよ、最上さん。
CM撮影とはいっても、これは演技だ。
いつもの君らしく、俺の演技に合わせて?」
 
 
「…………!
 
はいっ。」
 
 
これは "演技" 。
大切なことを思い出したキョーコは、気持ちを切り換えた。
 
 
しっかりと手を繋いだ二人。
見つめ合って微笑んだり、両手を取り合ってはしゃいだり、コロコロと表情を変えながら、初々しいカップルのような様子を演じていく二人。
 
走り回っているうちにキョーコが足元の小さな段差に気づかずバランスを崩したその時ーーー
 
後ろからふわりとキョーコを抱き締めた蓮。
 
 
「…………好きだよ。」
 
 
海風に乗って、微かにだがキョーコの耳にそう届いたーーー。
 
 
 
 

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greenさまよりリクエスト頂きました♡
34巻ACT.206扉絵より妄想(〃艸〃)
CMでもグラビアでもいいので蓮さまに見せてやってください!
とのことでしたのでCMで行ってみますヽ(*´∀`*)ノ

 
ところで、、6月頭ごろ。
今日は書き書きデーだ!φ(..)
と意気込んで時間を取ってみたものの、お話の続きを書こうか新しく違うのを書こうか、、迷いに迷って、何故か迷いすぎて血迷ったらしく気がついたら絵を描いていたとか!Σ( ̄□ ̄;)
一応このお話の場面のラクガキなので、あ~あれね、程度にご確認頂けるお覚悟がおありの勇気あるお嬢様は、良かったら下の拍手ボタンをポチしてみてください……(´-ω-)人
見なくても全くお話に影響はありませんが、クスッと笑っていただけたら幸いです……(^^;

チョーアナログで画像もかなり悪いですが・・
では・・↓↓↓
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