「あっ、敦賀くぅん、見てぇ。
私たちと同じこと考えてる人がいるー。」
(えっ!?この声……)
村雨に手を引かれるキョーコは、後ろから聞こえてきた声に振り向くと……
「綾さん……と、敦賀さん……」
キョーコのその声に村雨も足を止めて振り返る。
「なーんだ。誰にも見つからないと思ったのに、見つかっちゃった。
でも、そっちも同じ考えならお互い様だね。」
村雨はキョーコの手を離すこともなく蓮を視線で威嚇する。
「お互い様?
俺は部屋に戻ろうとしただけだけど?」
「部屋にって、綾ちゃんとでしょ?
お互い様じゃん。
じゃ、京子ちゃん行こう。」
早く蓮たちを撒きたい村雨は、キョーコの手を強く引く。
一方キョーコは、蓮の様子に怨キョが疼き始めて戸惑っていた。
「敦賀くぅん、私たちはこっちから行きましょう?」
「いや……。
ちょっと後輩指導してくるので、失礼しますね。」
サラリと笑顔を見せ、綾に絡み付かれていた腕を解いた蓮は、ほんの数歩で村雨とキョーコの目の前にやって来た。
「悪いね、村雨くん。
最上さんはまだうちの事務所のルールを理解しきっていないようでね。
俺からしっかり指導しておくから、ちょっと彼女を借りていくよ?」
キラキラとした笑顔であっさりとキョーコの手を取り返す蓮。
「えっ!?
事務所のルールって……」
以前の親睦会で蓮が村雨についた嘘。
異性の共演者との必要以上の接触はーーーというのを思い出したキョーコ。
他の人には笑顔に見えても、明らかに怒っていると分かる蓮の様子に、キョーコは本気で焦っていた。
「チッ。
せっかくのチャンスだったのにーーー」
出鼻を挫かれた村雨は潔く宴会場へと足を向けた。
「ほら、綾ちゃんも戻るよー?」
呆然と立ち尽くす綾の腕を引いて、再び宴会場へ入っていった二人。
「あのっ、敦賀さん……?」
二人が戻ったことを確認すると、無言でキョーコの手を引いた蓮は、そのままエレベーターホールへと向かい、蓮の部屋のある最上階のボタンを押す。
「えっと、私っ……」
きっと何か厳しく注意されると焦るキョーコに何も答えず、部屋の鍵を開け中へと入る。
カチャリーーー
後ろ手に鍵を掛け、キョーコを部屋の中まで引いていった蓮は、ベッドの前で足を止めた。
「え?
ちょっと待っーーー
…………きゃぁっ!!」
そしてキョーコを強引にベッドへと押し倒す。
「敦賀さんっ!?
あのっーーー?
…………ぃやっ///」
キョーコの首筋に軽く唇を寄せた蓮は、しばらくすると身体を離してキョーコを見下ろした。
「ーーーこういうこと、されてたかもしれないんだよ?」
「え……」
いきなりのことに涙目になっているキョーコは、ようやく言葉を発した蓮を見上げる。
「あのまま村雨に付いて行っていたら、こういうことされてたかもしれないんだよ?」
「あっ…………」
ようやく蓮の行動と言葉の意味を理解したキョーコ。
「ごめんなさい…………。」
口許を押さえて涙を溢すキョーコを蓮は優しく抱き起こした。
「ごめん、強引な指導で……」
怨キョはすっかり鳴りを潜め、蓮の優しい表情にホッとしたキョーコだが……
「……でも、綾さんのことは……良かったんですか……?」
そう、こうしてキョーコが二人で蓮の部屋に来ることになる前、ここに来るはずだったのは……
「本当はね、彼女を撒こうと思って外に出たんだ……。
気を悪くさせたらいけないと思って、あの場でははっきり言えなかった……。」
「そう、だったんですか……?」
「それに君と村雨くんの姿が見えなくなったから……心配で……
って、…………最上さん……??」
色々と安心したこともあり、昨夜の睡眠不足から急に眠気に襲われ始めたキョーコ。
「敦賀さん……」
「ん?」
「すき…………」
「えっ!?」
薄れ行く意識の中、蓮の腕の中でキョーコは……
「やき…………
食べ……たかった…………。」
「え……。
すき焼き……?
ああーーー。」
そういえば、今日の宴会メニューはすき焼きだったな……と思い出し、納得した蓮。
「ふぅ……全く…………。」
腕の中の無防備な想い人。
心配させて、期待させて……
「このくらい、いいよね??
キョーコちゃん……」
完全に夢の中の住人となったキョーコの唇の端に、蓮はそっとキスをしたーーー。
⇒ Intertwined love (37) へ続く
もう、ホント古くてベタですみません(*v.v)。
このシリーズはベタでベタベタ宣言してるので、
こんな感じで突き進みますよ・・(*´σー`)
明日もUPあります♪イエイ!