前回のお話はこちら
⇒ Intertwined love (34)











「……撮影、ストップしたままですね……敦賀さん?」


「そうだね……何かあったのかな?」


蓮は、慌ただしい様子のスタッフの方へと向かった。


(このあと例のラブシーンの撮影もあるのよね……?///)


「………………みたいだよ?

  ……最上さん?」


「ぅひゃぃっ!?///」


(しまったわ///考え事してて聞いてなかった……)


「思った以上に吹雪いて来てるみたいで、今日の撮影は中止になるみたいだよ?」


「えっ!?///」


座り込んだままのキョーコに近づき腰を落とした蓮は、真っ赤になっているキョーコの頬にすっと手を伸ばした。


「ラブシーン……延期になって残念だったね?」


「○X▲◎★□~~~っっ!!///

  ざっ……残念なんかじゃありませんっ!」


プィっとそっぽを向いたキョーコに、


「残念は俺の方か……。」


と蓮が呟いたのは聴こえてはいなかった。



*  *  *  *  *  *  *  *  *  *



一旦山小屋での撮影を切り上げ、ホテルへと戻った一行は、思わぬ時間が空いたことで大広間へと集められていた。


「今日は撮影中止になってごめんなさいねー!
  その代わり、この時間を宴会に当てたいと思いまーす!
  しかも今日のメニューはすき焼きでーす!!
  皆、いっぱい食べて、いっぱい飲みましょーっ♪

  かーんぱーーーい!!」


増田監督の音頭で始まった宴会。

キョーコは相変わらずの末席で皆を眺めていると……


「なんか宴会多くない?
  京子ちゃん飲めないのにねぇ?」


隣に座った女性スタッフが声をかけてきた。


「いえ。飲めなくても私は楽しいですよ?
  すき焼きも久しぶりで嬉しいですし。

  それに昨日のは撮影での宴会でしたしね?」


ふふっと笑うキョーコ。


「京子ちゃんと敦賀くんのラブシーン、楽しみにしてたんだけどねぇ。
  もうロケは明日の朝までだし、ラブシーンの撮影はスタジオになるんだってね?」


「そうみたいですね。」


結局吹雪のため撮影中止になったラブシーンは、後日スタジオにセットを造って撮影することになった。


「敦賀くん宴会になるといつも女優さんたちに囲まれてるね。

  京子ちゃんは行かなくていいの?」


「えっ!?
  私は別に……。」


「あっ、ほら、元カノ役の綾さん、かなりプッシュしてるねー!」


「えっ……?」


女性スタッフに促されるように他の人の隙間から覗き見た光景は、まるで本当の恋人のように蓮の腕に絡み付く真理奈役の女優と、払い除けることもなく受け入れているかのように見える蓮の二人だった……。


ふいに昨日の二人のキスシーンを思い出すキョーコ。


キョーコよりも少し背が高く、モデル体型の綾。
キョーコが一番気にしている胸ももちろん彼女の方が……。
いわゆるフェロモンもばっちり出ている。


(綾さんって、ショータローの好きそうな感じ……。
やっぱり敦賀さんもあぁいう人が好みなのかな……。)


「……京子ちゃん?

  顔色悪いけど大丈夫??」


「えっ……あ、ごめんなさい。
  大丈夫です。

  昨日余り眠れなくて……」


「睡眠不足はダメだよー。
  京子ちゃん、女優さんなんだから。」


「そうですよね……。」


昨夜は本当に余り眠れなかったキョーコ。
蓮と綾のキスシーンが頭から離れなかったのと、今日行われるはずだった蓮とのラブシーンのことで頭がいっぱいだったのだ。

その上演技でもない時に二人の仲を見せ付けられては、たまったものじゃない……。

居たたまれなくなったキョーコは、


「ちょっとお手洗いに行ってきますね。」


と、隣の女性スタッフに伝えて席を立った。


盛り上がる宴会場を尻目に大きな襖を開け外へ出る。


すると宴会場の外、壁に凭れ掛かるように村雨が立っていた。


「あれ?村雨さん……、お疲れ様です。

  皆さんと飲まないんですか?」


キョーコは難しい顔をして立っている村雨を不思議そうに見る。

皆で騒ぐ宴会も、お酒も大好きな村雨が一人で宴会場の外で立っているのはキョーコにとってとても不思議な光景に思えた。


「…………なんでだろうね?」


「えっ?何がですか?」


突然問われ、困惑するキョーコ。


「なんで、俺だけキスシーンないんだろうね?」


「えぇっ!?


  ぷっ……!あははっ!」


余りにも渋い表情の割に、悩みはそれなのかと思わず噴き出すキョーコ。


「村雨さん、キスシーンしたかったんですか?」


確かに主要な男性俳優3人の中でキスシーンがないのは村雨だけだった。


「したいよー!そりゃあ、ねぇ?

 俺だって年頃の俳優なのにまだ一度もないんだぜ?

  今までアクションばっかで、やっと恋愛モノキターーー!って思ったのに……。」


「ふふっ、年頃って……。

  でも、私も今回の映画が色々初めてで……すごく緊張してたんですよ?

  そんなにイイモノじゃないですけどね?」


実際本当に緊張してたのは、光とのキスシーンではなく蓮とのラブシーンだったが、そこは敢えて伏せて村雨を宥めるキョーコ。


「キスシーン緊張してたの?

  全然そんな風に見えなかったな……。」


「ふふふ。

  今はラブシーンが撮影延期になって少しほっとしてます……。」


「うん、俺もほっとしてる。」


「えっ?」


ふいにキョーコの手を取った村雨は、


「京子ちゃん、このまま宴会抜け出そう?

  俺の部屋で話さない?」


真剣な表情でキョーコを誘った。


「えっ?

  抜け出すって……」


「大丈夫だよ。
  皆飲んでるし、居なくなっても気づかれないよ。」


強い力でキョーコの手を引く村雨。


(待って……!
村雨さんの部屋にって……
それって二人っきりになるってこと!?)


「えっ、でもっーーー!」


そのまま宴会場を離れる二人ーーー。




⇒ Intertwined love (36) へ続く

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また1ヶ月以上間を空けてすみません・・・
なんか突然書けました(笑)
ちなみに、明日も続きUPできます♪