{作詞:橋本淳、作編曲:筒美京平} 

 

popfreakのアメブロは、毎回海外のスタンダード曲を中心に10年以上も続けてきましたが、さすがに700曲を超えたあたりでネタ切れとなりました。 そこで心機一転、J-POPにチャレンジしようと思い立ちました。ちょうどアジアを中心に日本のシティ・ポップ・ブームですから、日本の楽曲制作のあり方、作品のコンセプトなど、ボクの勝手な独断と偏見でご綴っていきたいと思います。 

 

そこで最初の曲は、いしだあゆみが歌った「ブルー・ライト・ヨコハマ」です。しかものちに昭和歌謡としてヒットを連発するスーパーコンビ、橋本淳=筒美京平にとっても初のチャート1位曲ですから、マイブログ邦楽編の始まりに相応しいナンバーだと選んでみました。

 

 まずは、いしだあゆみの歌った「ブルー・ライト・ヨコハマ」。本当はレコード音源を持ち出すべしなのでしょうが、やはり動画がいいですよね。それもなるべくオリジナルレコードの発売日に近い時期の映像を探したら、翌年末のNHK紅白歌合戦の動画が見つかりました。思えばこの1969年明けの1月は、東大闘争がピークを迎えた時計台の攻防で幕を開けたのでしたよね。

 

 

資料によれば、録音の歌入れに際して、作詞の橋本淳は和風な情緒を際立たせるべく、彼女に対して「さのさ」を歌うようにサジェッションしたといいます。一方、作曲した筒美は後に、歌い出しの軽くハネるような感じの歌い方は、島倉千代子の「愛のさざなみ」(1968年7月発売)を意識したのではないか、と回想したそうです。 いえいえ、ボクの推測ではお千代さんの歌い方だけではなく、曲想も「さざなみ」していると思いますよ。なにしろ洋楽のLPを飛ばし聴きしてサウンドアイディアを見つける手法は当時の筒美先生にかかわった弟子たちは異口同音に証言しているのですから、先行した邦楽曲からアイディアのヒントを得ても不思議ではないはずですよね。 

 

それと筒美マジックの神髄は、イントロにチェンバロを使ったことだと言われています。ポップスの録音にバロック時代の楽器を持ち出す。これがイントロの忘れがたいメロディに使われることによって大ヒットとなったのではないでしょうか。以下のカヴァー曲もチェンバロは使わなくても、ほぼ例外なく、このイントロメロディは採用されています。まるでこのイントロがなければ、「ブルー・ライト・ヨコハマ」じゃない、と言わんばかりですよね。 

 

次は、ちあきなおみのカヴァーです。録音時期が不明ですが、なかなか味わいのある「ブルー・ライト・ヨコハマ」の歌唱です。ボクはこの方のファドを歌ったCDなど愛聴しております。

 

 

 

イントロにラテンリズムを加えたのが、サザン・オールスターズ。とはいえ歌ってるのは、原由子。彼女のヴォーカルはやさしく響きますが、本編に入ると筒美マジックから抜けられないようです。ちなみにこの「ブルー・ライト・ヨコハマ」ヴァージョンは、桑田佳佑がカヴァーした「リンゴ追分」(美空ひばりの曲)と共にマキシCD(2005年)に収録されているそうです。そっちもそそられますね。

 

 

 

珍しい男性歌手のカヴァーです。女性歌手の歌ばかりをカヴァーしたアルバムがシニアレディーズの紅涙を絞ったことも忘れられません。キーの高い徳永英明ならではの切ない歌唱です。

 

 

 

異色だったのは由紀さおりが、アメリカのジャズ・バンド、ピンク・マルティーニと録音したアルバム『1969』(2011年)が発売になって、そこに収録されていることを知りました。早速タワーレコードに走っていったのです(笑)が、早すぎて店員さんも知らなかったのか、「ハァ?ユキサオリ?うーん?」てな反応だったので、止むを得ず店内のCD棚を漁っていたら発売したばかりのアルバムを見つけて買った苦い思い出があります。なにしろ、昭和歌唱が大好きなトーマス・ローダーデールが、アメリカの中古LP屋さんで由紀さんのLPを買ったところからこの企画は始まったそうですから、彼のアレンジも昭和歌謡の王道を行っています。由紀さゆりのヴォーカルもさすがです。

 

 

 

最後は、岩崎宏美の「ブルー・ライト・ヨコハマ」です。この方の「思秋期」の切ない歌唱には、泣かされた方が多いのではないでしょうか。

 

 

 

さて、今日は昭和43年末の発売シングル「ブルー・ライト・ヨコハマ」を取り上げました。橋本=筒美ヒットコンビのこの曲は、和(さのさ)、洋楽器(チェンバロ)の味付けというマジックによって、いつまでも歌われ続ける名曲になったのだと思います(終わり)。