日本では最初に西田佐知子の歌でヒットした曲です。
この曲の生まれはベネズエラで、アルパ奏者のウーゴ・ブランコの演奏で知られるようになったそうですが、作ったのは彼の伯父にあたるホセ・マンソだといわれています。1958年にできたこと、原題と意味は「モリエンド・カフェ」(コーヒーを挽きながら)であることは確かなようです。
西田盤(1961年)の歌詞「昔アラブの偉いお坊さんが・・」のインパクトが強くて、後にカヴァーされるのは、ほとんどがこの歌詞です。
それから約30年後に、荻野目洋子(1992年発売が、西田佐知子と同じ中沢清二の訳詞で歌っています。
井上陽水がこの歌を歌っているのは、広く知られていますよね。これは今時流行りの縦長動画ですから、最近の映像かも知れません。この歌詞も中沢版です。 井上陽水「コーヒー・ルンバ」(2001年)
中沢版以外の歌詞で歌ったのが、ザ・ピーナッツ。1961年12月発売のシングルには、「訳詞:あらかはひろし」と別の歌詞です。同年ヒットした西田盤と差別化してヒットを狙ったのかもしれませんね。「情熱の花」(1959年)同様、洋楽カヴァーは私たちが本命よ、とね。
「コーヒールンバ」には、訳詞内容も含め、いくつかの謎があります。
まず謎のその1は、訳詞の内容が原詞とどうちがうのか、という点です。
ある本に原詞を音楽評論家の高場雅美さんによる翻訳が載っていました。
「午後の光が落ちる頃、影がよみがえる、静寂の中でコーヒー園はふたたび聞いている、あの悲しげなひびき、古い挽き臼の愛のうた、(中略)疲れもしらずひと晩じゅうコーヒーを挽きながら」。
この訳詞のどこにも「アラブの偉いお坊さん」など登場していません(笑)。
謎のその2は、原題の意味は「コーヒーを挽きながら」でしたが、リズムはルンバではなく、初演したウーゴ・ブランコが編み出した「オルキディア」という新しいリズムだったとか。それを日本で発売する際にレコード会社から相談された音楽評論家N氏が、ルンバで使われることの多いクラベスの5つ打ちのリズムと共通していることから、ルンバにしたほうが日本人の郷愁にもピッタリだと提言したのが採用されたそうです(竹村淳著「ラテン音楽ベスト100」)。
このように洋楽曲の日本カヴァー盤には、面白い逸話がありますね。 さて、次は原詞で歌われた「モリエンド・カフェ」のバージョンです。世界でこの曲がリヴァイヴァルするきっかけとなったのが、この人がカヴァーしたためだといわれています。 スペインの貴公子、フリオ・イグレシアスです。80年代初頭にコールポーターの「ビギン・ザ・ビギン」で世界の女性心を熱く燃え上がらせました。このライブ映像はその後世界各地で開かれたコンサート映像ですが、メドレー1曲目が「コーヒー・ルンバ」。冒頭から1分間の短い歌唱です。
ミーナがイタリア語で歌ったのは、1962年。当時のテレビ出演の映像がありました。男性ダンサーとのやりとりが珍しいですね。昔の偉いお坊さんが見たら、仰天するような振り付けですね。ミーナ「コーヒー・ルンバ」
なんと、ホセ・フェリシアーノ(1945年生まれ)も歌っている「コーヒー・ルンバ」。動画ではないのが残念です。
【余談】 日本語歌詞が面白いからというわけではないでしょうが、一時「くすりルンバ」でヒット曲のあるアントニオ古賀が、「コーヒー・ルンバ」のメロディに日本酒の銘柄とマージャンの役名を羅列した「日本酒&麻雀ルンバ」という曲を出したそうです。ボクは日本酒も麻雀も縁がないので、違いが分かりませんが・・・。
最後は、井上陽水×タモリのギター漫才で「コーヒールンバ」。知り合いに教えてもらって以来、なんども観ていた動画です。タモリがレギュラーを務めていた「笑っていいとも」の放送番組を誰かがYouTubeのアップしていたのですね。
「コーヒー・ルンバ」にまつわる長い旅のブログでした。あれこれ調べながら、最後のオチで笑ってもらえると嬉しいなと思いながら・・・・。