「ホワットル・アイ・ドゥ」は、1923年(日本では大正12年、関東大震災の年ですね)にアーヴィング・バーリンが作詞作曲した3拍子のバラード。 レビュー『1923年のミュージック・ボックス』に挿入された曲ですが、その後この曲が広く愛好されて多くのシンガーがカヴァーしたことでも知られています。 

 

どうやらその理由は、この時のバーリン自身の恋の悩みにあったようです。資料によると、バーリンが熱烈に愛した郵政関係の高官の娘エリン・マッケイと恋に落ちたものの、マッケイ家はカソリック信者で、バーリンはユダヤ教の信者であるため、エリンの父は結婚に大反対。娘のエリンを遠くヨーロッパに行かせてしまったとのことです。 バーリンは遠く離れた恋人を想ってこの悲しい曲を書いたそうです。

 

♪あなたが離れているとき、私はどうすればいいの・・・、という深い悲しみが歌われています。 この曲をgeorgesandさんからリクエストをいただいてから調べてみましたが、前述のレビューで最初に歌ったグレース・ムーアとジョン・スティールの歌唱はYouTubeでは見つかりませんでしたが、1924年録音のウォルター・ピジョンのこの歌唱が一番古い音源かもしれません。なにしろ大正年間ですからね。

 

 

 

この曲のカヴァー録音は数々ありますが、最初はバーバラ・ストレイサンドです。ただし、「What'll I Do~My Funny Valentine」のメドレーです。

 

 

 

次はアメリカを代表する男性歌手、ビング・クロスビーの甘いクルーナーぶりにしびれます。なにしろアーヴィング・バーリンの代表曲「ホワイト・クリスマス」(1942年)を最初に映画『ホリデイイン』に 主演して歌い、後にこの曲をレコード史上最大のヒットといわれるにいたったクロスビー。バーリンとのご縁に敬意を表して「ホワットル・アイ・ドゥ」をアップしました。

 

 

 

3番目はビング・クロスビーの後継者として、人気をさらったフランク・シナトラ。彼は1947年にこの曲を録音しています。上手いなぁ、しびれます。

 

 

 

心温まるナット・キング・コールの「ホワットル・アイ・ドゥ」は、シナトラと同年の1947年の録音です。  

 

少し時代が下がって1974年。トランペッターでヴォーカルにも定評のあるチェット・ベイカーが、クリード・テイラーのレーベル・CTIで録音したリーダーアルバム『She Was Too Good To Me 』に収録しています。 

 

前半はトランペット演奏、後半は切ない歌唱で胸をうちます。CTIの看板アレンジャー、ドン・セベスキーの編曲も素晴らしいし、ヒューバート・ローズ、ポール・デスモンド、ボブ・ジェイムス、ロン・カーター、ジャック・デジョネットほかのミュージシャンもキラ星のごとし。ブログ冒頭の写真は、マイコレクションのCTIコンピ4枚組の解説書の写メです。  

 

しっとり聴かせる男性歌手の代表でしょう、ジョニー・マティスの1978年の録音です。ピアノのみの伴奏で、とりわけしっとりした「ホワットル・アイ・ドゥ」です。

 

 

 

新しい時代にも大ベテランのウィリー・ネルソンは、スタンダードとして録音しています。しかもMVも作っています。  

 

アメリカを代表する俳優で歌手、ジュディ・ガーランドの「ホワットル・アイ・ドゥ」は、4K映像で作られています。映像がクリアーで驚きます。

 

 

最後は、アート・ガーファンクルが2007年のカヴァーした「ホワットル・アイ・ドゥ」です。なんでも女優ヴァージニ・メイヨー(2005年死亡)へのトリビュートだそうです。

 

 

数々の名曲を残したアーヴィング・バーリンといえど、この「ホワットル・アイ・ドゥ」が聴く人の心を打つのは、自身の悲しい実体験をもとに作ったからだと思います。 

 

なおこの曲は、1974年の映画『ザ・グレート・ギャツビー』(スコット・フィッツジェラルド原作、ロバート・レッドフォード、ミア・ファーロー主演)に使われたことが、この曲のリヴァーヴァルにつながったのかもしれません。 このオープニングクレジットでの歌唱者は、William Athertonという男性シンガーだとまでは分かりましたが、残念ながら経歴は不明です。

 

 

 

(追伸、バズ・ラーマン監督、デカプリオ主演の2013年版のリメイク同名映画でこの曲が使われたのかどうかは、分かりません)