「スウィート・ロレイン」は、ミッチェル・パリッシュ作詞、クリス・バーウェル作曲で1928年に作られたナンバーです。この時代にしては珍しくミュージカルにも映画にも無関係で作られましたが、 最初にこの曲を歌ったのが美男子のバンドマスター兼シンガー、ルディ・ヴァリー。この人は、popfreakがブログのプロフィールに使わせてもらっている方ですが、どうやらこの曲の作曲者がルディの楽団の当時のバンドメンバーだったことで録音したそうです。

 

でもヒットしたのは1937年録音のナット・キング・コールのレコードで、以来コールの持ち歌として広く知られています。ちなみにルディ・ヴァリーは映画『カサブランカ』の「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」を創唱したことでも知られていますが、これも彼のレコード発売から10年後に映画でドリー・ウィルソンが歌いヒットしました。どうも不運な方のようです。

 

 ナット・キング・コールの歌唱ではいくつかの動画がありますが、JATPセッションのヴァージョンをアップします。メンバーが以下の通りスゴイのですが、演奏途中の壁になぜかカタカナでメンバーの名前が貼ってあります。結構デタラメで、何のための表記なのか、謎です。

 

 例えば、レイーブラン(レイ・ブラウン)、ハブ 上レス(ハーブ・エリス)、スタン ゲフ(スタン・ゲッツ)などですが、ゲッツはこのセッションにはいないので、もしかしたら来日公演のパーソネル予告宣伝用かもしれませんね。 この動画で最初にキング・コールを紹介するのは、JATPの主宰者ノーマン・グランツです。珍しいコールマン・ホーキンスのソロの動画も見ものです。 

 

Nat King Cole,vocals Oscar Peterson,Piano Ray Brown,Bass Herb Ellis,Guitar and the one and only Coleman Hawkins on tenor saxophone  

 

以下は動画ではありませんが、貴重なジューン・クリスティの「スウィート・ロレイン」です。1945年の録音ですから、日本の敗戦の年です。  

 

フランク・シナトラもこの曲を歌っていますが、録音は1946年。この頃のシナトラはまだ初々しさが残る歌唱法に注目です。なぜかこの録音のバックはメトロノーム・オールスターズ。 チャーリー・シェーヴァーズ(tp)、ジョニー・ホッジズ(as)、コールマン・ホーキンス(ts)、バディ・リッチ(ds)ほか錚々たるメンバーですが、ここでもコールマン・ホーキンスが演奏しています。

 

 

最後は、ジャズ・ヴァイオリンのステファン・グラッペリの演奏した音源が、映画『恋愛適齢期』(2003年、ジャック・ニコルソン、ダイアン・キートン、キアヌ・リーヴスなど出演)に使われたサントラです。

 

 

 

1920年代の楽曲が75年後の映画音楽に使われて21世紀に甦ったレア・ケースです。 新しい映画に古い曲が使われると、なぜか嬉しいpopfreakなのです。