1940年のブロードウェイミュージカル『キャビン・イン・ザ・スカイ』で人気となったナンバーが「恋のチャンスを」(原題:Taking a chance on love)。 

 

ブロードウェイのミュージカルととその後の1943年のMGMミュージカル映画『キャビン・イン・ザ・スカイ』の両方でペチュニア・ジャクソンの役を演じたエセル・ウォーターズによって紹介されました。 ヴァーノン・デュークが作曲し、作詞はジョン・ラトゥシュとテッド・フェッターです。 

 

実はボクが長年の憧れながらも、動画は一度も見たことがないエセル・ウォーターズが、1943年のその映画で「恋のチャンスを」を劇中歌っている場面をYouTubeで見つけました。欣喜躍雀(笑)。  

 

もう20年以上前に買ったCDで、「Crystal Waters/Storyteller」(A&M)を当時ボクは愛聴していました。「100% Pure Love」というのが気に入ってました。調べたところ、エセルはクリスタルの大叔母にあたるそうで、歌の血脈を感じた記憶が甦ります。 (ボクの持っているエセルのLPと、クリスタルのCDを並べて撮ってみたのが冒頭の写真です) 

 

そのエセルがこの曲を歌ってから77年、アメリカの俳優で歌手のレネー・オルステッドが2017年のアルバムで歌っていました「恋のチャンスを」。  

 

次も21世紀に入ってからのパフォーマンスです。アメリカのジャズ歌手ジェーン・モンハイトが2004年のジャズクラブでのライブで歌った「恋のチャンスを」。オープニングにおしゃべりがありますが、歌はなかなか素晴らしいです。  

 

ボクの若き日の憧れ、アニタ・オデイが、1957年に出した名盤『シングス・ザ・モスト』にもハイライト曲として入っています。ピーターソン・クアルテットのバックです。何度聴いたか分からないくらい好きなLPです。

 

この曲には、この人は外せないのでは?ダイナ・ショアの1955年録音です。ボクは50年代に生きている時代遅れ人間かもしれません(苦笑)。  

 

さすがに女性が歌うケースが多い「恋のチャンスを」。ジュディ・ガーランドとジョニー・マーサーが二人で歌う1943年5月の放送録音も見つかりました。スゴイです、ジュディの歌唱。  

 

男性陣にも名録音は多くあります。女性陣もそうでしたが、この曲は歌う人によってテンポやリズム、歌い回しが違いますね。これが歌ものの楽しみでもあります。 トニー・ベネットが1991年にロンドンのプリンス・エドワード劇場で歌った「恋のチャンスを」。素晴らしいです。

 

「恋のチャンスを」の極私的ベストは、フランク・シナトラの1954年アルバム『スウィング・イージー』(キャピトル盤)です。何度聴いてもシナトラの罠から抜けられません(笑)。  

 

何度もマイブログに登場はしますが、リアクションなきマーク・マーフィー。1957年発売の2枚目のアルバムに収録された「恋のチャンスを」では珍しくヴァースから歌っています。バックはラルフ・バーンズ楽団で、スロウなテンポで痺れます。  

 

他にもこの曲の録音は多くありますが、最後は女性ジャズ・ピアニストのヘイゼル・スコットが、見事なピアノ演奏を見せています。映画の中の一部です。

 

この人は、1958年12月12日、パリのクラブ・サンジェルマンで行われていたアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズのライブに客としてきていた一人で、「モーニン」の演奏中に感極まって「Oh Load, have mercy!」とかなんとか大声で発したのがライブに録音されています。

 

この曲のタイトルが「モーニン・ウィズ・ヘイゼル」とクレジットされるほどの貢献をしたことは、ジャズファンでは広く知られています。 彼女のピアノ演奏も初めて見るボクには感動的で、思わず「神様、仏様~」とか叫んでしまいそうです。ブギウギのストライド奏法とかビックリなテクニシャンです。  

 

50年代はボクの時代、と思わず独り言をいいたくなるくらいの名唱・名演揃いです。でも最近はそんなアナクロな自分に少し焦りを覚えます。