さて、おそらくどなたもご存じの曲「ブルー・スカイ(ズ)」(原題:Blue Skies)。今日は前回の男性編に続いて、女性歌手編です。 

 

曲の概要は省略しますが、1926年の12月に開幕したミュージカル『ベッツィ』のためにアーヴィング・バーリンが特別に書き下ろした1曲です。アメリカにミュージカルなかりせば、あの膨大な名曲の数々は生まれていなかったと思うと、ミュージカルこそがアメリカの楽曲創作の源泉であり、ショウビジネス界を支えた偉大なる遺産ということになりますね。   

 

最初はダイアナ・クラールのCD音源から。前半がラテン調にアレンジされた歌唱で、とても好きなのです。ボクはこの方のアルバムを買い続けて7枚くらい買っていますが、リピートするのはトミー・リピューマがプロデュースしたアルバムに限られます。

 

そういえば、先日ある書店で見つけた「トミー・リピューマのバラード」(ベン・シドラン著)を途中まで読んで、続きを忘れていました。彼女が2017年に発売した『ターン・アップ・ザ・クワイエット』が、トミー・リピューマがプロデュースした人生最後の作品で、この「ブル-・スカイ(ズ)」が7曲目に入っています。トミーの享年は80歳でした。 (冒頭の写真は、トミーの本とトミーがプロデュースしたダイアナのCDでボクが持っているすべてのジャケットです)  

 

いつもこの人の歌声を聴くと心が温かくなるドリス・デイも「ブルー・スカイ」を歌っています。レコード音源ですが、ホントに素敵な歌唱です。CDで2枚棚にありましたが、この曲は入っていませんでした。  

 

次はダイナ・ワシントンの歌う「ブルー・スカイ」です。録音は1954年だそうですが、このスロウで筋の通った(?)歌唱にしびれます。メンバーも凄くて以下のパーソネルです。 Clark Terry (tp), Gus Chappel (tb), Rick Henderson (as), Eddie Lockjaw Davis (ts), Junior Mance or Sleepy Anderson (p), Keeter Betts (b), Ed Thigpen (d)  

 

やはり大御所、エラ・フィッツジェラルドは外せませんね。1958年のVerveレーベルです。アーヴィング・バーリン作品集に収録されていて、無双のスキャット余人に替え難し。すごいです。  

 

ダンサー&シンガーとして一世を風靡したジョセフィン・ベイカーが、1927年に録音した音源です。この人の時代にタイムスリップしてのぞいてみたい気がします。

 

彼女の生まれはセントルイスで貧しい家庭に育ち、ニューヨークに出てニグロ・ミュージカルに出演しているところをパリから来たタレントスカウトに見出され、1925年にシャンゼリゼ劇場のレビューで初めてチャールストン(踊り)をフランスに紹介してセンセーションを巻き起こしたそうです。  

 

次は時代も違い、アメリカのフォーク系シンガー、エヴァ・キャシディの「ブルー・スカイ」です。ボクは1枚だけCDを持っていますが、33歳で亡くなったのは惜しい気がします。  

 

"one-woman band" と名付けられたテレサ・アンダーソンによる「ブルー・スカイ」です。この方、名前を聞くのは初めてでしたが、一人ですべての楽器を演奏し、そのパートごとにフットペダルで録音しながら次 々に楽器を重ねてゆく手法で演奏しています。

 

しかも2011年だそうですから、イギリスの超人気アーティスト、エド・シーランがループ・ステーションという名前の一人演奏機器を操って演奏・歌唱・録音・チャンネルごとの再生もすべてリアルタイムで行って評判となる前のことなのでビックリしました。テレサもエドも頭脳の構造がどうなっているのか、ボクには驚異に思えます。  

 

アーヴィング・バーリンが、1926年(昭和でいうと元年)に作った曲が多くの歌い手にカヴァーされて聞かれ続け、また最後はワンウーマンショウの女性アーティストに演奏・歌唱される。この曲が生まれてもうすぐ100年が近いのですよね。 

 

ところで終戦翌年の1946年に、この曲「ブルー・スカイ」のタイトルで映画が作られました。しかも主演は、フレッド・アステアとビング・クロスビーなのですが、YouTubeを探したところその映画の中での二人の歌って踊る場面はでてきたのですが、残念ながら二人が「ブルー・スカイ」を歌っている場面は見つかりませんでした。 

 

人生百年時代とか言われてますが、うかうかすると楽曲も平気で百年を超えるナンバーも続々とでてきそうです。約百年前の1920年代はローリング・トゥェンティーズと呼ばれた時代。アメリカでは禁酒法の下、コットンクラブなどジャズクラブが人気を博し、そこではチャールストンの踊りやジャズが盛んに演奏されました。ジャズエイジのあの喧騒にも興味が惹かれますね。