今日は3/11。東日本大震災から11年が経ちました。

 

天災によって「君去りし後」、悲しみに暮れる人も多かったはずです。まだ行方不明のかたも多いとか。思わず合掌したい気持ちになりますが、遥かウクライナでは酷い人災が続いている。なんという理不尽でしょうか。 

 

気を取り直して、と。今日は、1918年にヘンリー・クリーマー作詞、ターナー・トレイン作曲の古い曲を取上げてみたいと思います。

 

その前年の1917年には、オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンド(通称:ODJB)が初のジャズレコードの録音を行いました。この曲も100年以上前に作られた曲ということになります。 この曲を1918年に初めて録音した女性歌手が、マリオン・ハリスです。貴重な初録音曲盤がYouTubeに上がっていました。  

 

次は、やはり戦前に人気があったヴォードヴィルの大スター、ソフィー・タッカーの珍しい動画です。1952年10月に「エド・サリヴァン・ショウ」に出演したときの「After You've Gone」。1884年、ポーランド生まれなので、この時すでに68歳。堂々たる歌唱に敬意を表したいと思います。

 

次は「キング・オブ・ジャズ」と言われたポール・ホワイトマンの楽団による演奏に加えて、当時専属歌手だったビング・クロスビーが「アフター・ユーヴ・ゴーン」を歌っています。1929年10月NY録音です。

 

この頃、彼は3人組のリズムボーイズのメンバーとして同楽団の看板歌手になっていました。この後にソロシンガーとして30年代に活躍を始め、40年代には「ホワイト・クリスマス」で不動の人気を誇る存在になりました。  

 

古い録音が続いてしまいますが、次はルイ・アームストロングの演奏+歌唱です。

 

朝の連続テレビ小説『カムカムエブリバディ』で彼の名前のルイ、また愛称のサッチモが何度も会話に登場します。サッチモちゃん!という呼び方にボクはビックリしました。1971年に亡くなっているので死後50年以上経っているのに、この21世紀の日本でサッチモちゃんとテレビで連日呼ばれる日が来ようとは、草葉に陰でルイさん自身も驚いておられることでしょう(笑)。

 

 このSP盤で歌は1:45から。録音は1929年11月ニューヨークにて。なおサッチモの語源は、satchel-mouth(大きい口を表わすスラング)が短縮されてサッチェ(ル)マ(ウス)、さらに縮んで「サッチモ」となったのが定説です。ボクは、ヒキガエルの愛称だと思い込んでおりましたが、あるLPのライナーノーツを読んでいたら、イギリスのジャーナリストがそれを命名したこと、また本人がその愛称を気に入っていたことが書かれていました。愛すべし、サッチモちゃん。  

 

さすが古い曲だけに、エラ・フィッツジェラルドのライブ映像が見つかりました。日本のオーレックス・ジャズフェスにベイシー楽団(といってもベイシー御大は逝去後でおりません)をバックに歌っています。エラの「アフター・ユーヴ・ゴーン」も脱帽ものです。  

 

日本では意外に知られていないイーディ・ゴーメは、ヴァースから歌っています。この方、スティーヴ・ロレンス(シナトラとマイケル・ブーブレを足したような名歌手)との鴛鴦夫妻で有名で、力強い歌唱を聴かせてくれます。なおスティーヴ・ロレンスの姿を見られる映像は、映画『ブルース・ブラザーズ』のサウナ場面です。気になるかたは、ぜひチェックしてみてください。ただし歌を歌わないのが残念です。  

 

さて見逃せない映像です。

 

フランク・シナトラがクインシー・ジョーンズ(プロデュース、編曲、指揮)、ジョージ・ベンソン(g)らとスタジオで「アフター・ユーヴ・ゴーン」をレコーディングしています。2:20から再生されるように手を加えました。

 

スタジオでバンドとの同時録音。その場を席巻する存在感は、クインシーでもかないません。シナトラ、恐るべし。

 

 なおこれは、『L.A. Is My Lady』というシナトラ57枚目のファイナルアルバムに収録されていて、時は1984年。 Quincy Jones, Randy Brecker, Michael Brecker, George Benson, Joe Newman, Frank Foster, Steve Gadd,Lionel Hamptonらが参加しています。  

 

この古典的名曲「アフター・ユーヴ・ゴーン」といえば、わが国を代表するジャズ・クラリネットのリジェンド、北村英治さん。かつて銀座にあったjazz club"JUNK"で1971~2年に収録されたライヴ録音です。メンバーもリジェンド揃いです。 北村英治(クラリネット) 尾田 悟(テナーサックス) 西代宗良(トランペット) 増田一郎(ヴァイブラフォン) 八城一夫(ピアノ) 池沢行生(ベース) 須永 宏(ドラムス)  

 

最後の「アフター・ユーヴ・ゴーン」は、この曲の演奏といえばBenny Goodmanの定番だったことに敬意を表したディズニーのアニメ音楽動画(「ファンタジア」のジャズ版?)『Make Mine Music』より。

 

なんとこれは1946年、といえば日本で「東京ブギウギ」の頃に制作されていたアニメで、ボクも今回の楽曲検索で始めてその存在を知りました。アメリカ、恐るべし、ディズニー、恐るべし。  

 

さすがに100年を超える時代を生き抜いてきたスタンダード中のスタンダードナンバーなだけに、選び出したらきりがなく、こんなに膨大にリストアップしてしまいました。ジャズ録音史100年に想いを寄せてお楽しみください。