トニー・ベネット、95歳にして最後のアルバムはコール・ポーター作品集で、しかもパートナーはレディ・ガガです。 以前、トニーが発表した数枚のデュエット曲集でも、彼女は普段の派手なパフォーマンスとは裏腹に、素晴らしい歌唱力を示したガガ嬢にボクは感服しています。 

 

今回、アルツハイマーを公表したトニー(公表したのは家族ですが)とレコーディングしながら、思わず涙を流したという彼女の素直な心情にも心打たれました。 ですが、この「エニシング・ゴーズ」のヴァージョン(MV)は2014年に発表したデュエットアルバム『Cheek To Cheek』からの1曲。キュートなガガとトニーのスタジオ録音風景です。  

 

「エニシング・ゴーズ」とくれば、誰か重要人物をお忘れじゃあござませんかねぇ、と突っ込まれそうです。 そうそう遠州森の石松さま、じゃない、「アイ・ガット・マーマン」で宮本亜門がトリビュートしたエセル・マーマンさまでございます。また『アニーよ銃をとれ』でも大活躍、でも1950年の映画化に際してはベッティ・ハットンが主役を演じました。

 

でもそのミュージカルのなかで歌われた「ショウほどすてきな商売はない」(アーヴィング・バーリン作詞作曲)を元にした映画が1954年に制作されたときには、しっかり主役を演じています。 ちょっと脱線しました(笑)。ところで元に戻して、と。 

 

このミュージカル『エニシング・ゴーズ』は、1934年11月から420回上演され、その2年後にビング・クロスビーとエセルとの主演で映画化されましたが、邦題はなぜか『海は桃色』。また戦後の1956年にもビング・クロスビー、ドナルド・オコーナー、ミッツィ・ゲイナーでも映画化され、その邦題は『夜は夜もすがら』と不思議な邦題が付けられています。後者にはエセルは出ていません。 

 

ミュージカル版は、いまやわが国でも多くのローカル公演が行われており、最近では明治座での公演がコロナ禍で中止騒ぎになっているのをネットニュースで見ました。公演関係のかたは大変な時代を迎えていますね。 

 

さてYouTubeには驚くほど色んな動画が溢れていて、このエセル・マーマンのテレビ出演と思われる動画も時期・出典が不明ですが、その大物ぶりがうかがえる素晴らしい歌唱です。歌は1:13秒からです。  

 

今も人気の『エニシング・ゴーズ』は、第65回のトニー賞でリバイバル賞ほかを受賞して今も人気演目です。 ここではその受賞時のSutton Fosterとキャストのパフォーマンスです。とてもいいですね。  

 

フランク・シナトラは、キャピトルレコード時代の録音ですが、ボクの持っている『songs for swingin' lovers!』と『SWING EASY』を復刻した2イン1の30cm LPには収録されていませんので、いつの録音なのかは不明です。  

 

次は、エラ・フィッツジェラルドが1960年にオーストラリアに公演した時のライヴ映像です。エラさんの動画は少ないので、貴重です。そして実に素晴らしい!!  

 

エラさんとは逆アプローチのヘレン・メリルの「エニシング・ゴーズ」のレコード音源です。スロウな歌唱。クリフォード・ブラウンとのアルバムを制作していた時代のエマーシーレーベルのアルバムで、リチャード・ヘイマンの編曲指揮です。味わい深し。  

 

最後はコール・ポーター自身の歌唱盤で「エニシング・ゴーズ」。  

 

コール・ポーターについては、すでにマイブログでも多く取上げているのでひととなりは省略しますが、作詞も作曲も自分で行える才能あふれる音楽家だったといつまでも尊敬しています。自伝的映画『五線譜のラブレター』は必見ですよ。