メキシコの伝統的な歌謡、ランチェラの形式を借りてアメリカ人イネス・ジェイムスが作ったメイド・イン・USAの曲です(竹村淳著「ラテン音楽ベスト100」より)。
戦後生まれの世代には、♪街のあかりも消えはてて つらい別れのそのときよ、でお馴染みの江利チエミの滑舌のいい歌唱を思い出すことでしょう。江利チエミのレコードが1953年ですから前年の1952年にアメリカで公表されたものと思われます。
江利リエミの「ヴァイヤ・コン・ディオス」は、1番と3番を日本語で2番は英語で歌われています。SPのレーベルによれば、伴奏は原信夫をシャープ・アンド・フラッツです。
いきなり時代は飛んで2010年。イギリスのロックギタリスト、ジェフ・ベックがイメルダ・メイ(アイルランド出身のシンガーソングライター)とライヴでこの曲を演奏しています。
ジェフ・ベックは、尊敬する師匠、レス・ポールがこの曲を取り上げてヒットさせたこと、その前年の2009年にレス・ポールが94歳で亡くなり、追悼のセレモニーでレス・ポールとメリー・フォードが1953年にヒットさせたこの曲を演奏したものです。
さてその名コンビ、レス・ポールとメリー・フォードの動画がYouTubeに上がっています。当時のCM事情に興味あるかたには、この曲が終わった2分17秒から始まる女性のヘア・セットローションのCMが時代を感じさせてくれますので、お見逃し無きよう。ちなみに次の曲は「Sparkle」です。
その大元のヒットとなったのが、メキシコの歌手・俳優として大活躍したペドロ・インファンテによる歌唱です。この映像は、メキシコでのペドロの1953年の別の歌唱映像にペドロの歌をかぶせた合成ものです。
ナット・キング・コールのスペイン語歌唱ナンバーも人気がありましたね。「カチート」「キサス・キサス・キサス」などと並んで「ヴァイヤ・コン・ディオス」もその一つ。優しい声が聴こえてきます。
NHKの音楽番組にもよく出演していた女性三人組グループ、スリー・グレイセスのヴァージョンもなかなか素敵です。年代不明ですが、テレビ出演時の映像です。 スリー・グレイセスの「ヴァイヤ・コン・ディオス」
これで終わろうと思っていたのですが、珍しくドイツ語で歌った「ヴァイア・コン・ディオス」がでてきましたので、追加しておきます。このベリーナさんがどういうキャリアの方でドイツで人気があったのかどうかは不明ですが、 少なくともドイツでこの曲がローカル・カヴァーされていたことは確かなようです。 ドイツ語で歌うBelinaの1965年の歌唱です。
どうやら原題「Vaya co Dios」は、カタカナでは「バジャ・コン・ディオス」と表記するのが正しいみたいで、意味は「神様とご一緒に行きなさい」という、旅人を送る言葉なのだそうです。
お気をつけて!くらいの軽い挨拶にも使われるそうですから、覚えておくと普段使いできそうなスペイン語として重宝するかもしれませんね。
いい曲は国境を超えて歌い継がれるものだと思います。元はといえば、アメリカ産のメキシコ風ナンバーなのですからね。