ボクがこの曲「ブルース・イン・ザ・ナイト」を初めて聴いたのは、メル・トーメの歌でした。軽妙な歌唱が大好きで、改めてLP棚を探したらLPだけで9枚ほどありました(冒頭の写真)。一時は中古レコード店に通っていろいろと買ったことを思い出します。 邦題は「夜のブルース」と名付けられていますが、夜の盛り場の人間模様っぽいのでここではカタカナのままで表記します。
でもこの曲は同名映画のために1941年にハロルド・アーレンが作曲して作詞をジョニー・マーサーに頼むときに、"My mama done tol' me"から始めることを指定したそうです。歌詞の内容は、「息子よ、女がお前に甘い言葉をかける時、女は二つの顔を持っている。それがお前に夜のブルースを歌わせるようになるだろう」という意味深なもの。つまりは、夜の盛り場の男女の世界とは決して別世界ではないらしい歌詞の中身(笑)。大人になるときには、異性の本心を見抜く力を養うべしという親から子への忠告ストーリのようです。
その映画『Blues In The Night』は、日本未公開です。内容は、ジャズに生きる音楽家たちの物語で、テーマ曲ほか全6曲をアーレン=マーサーのコンビが書いています。製作年は1941年で、日本が真珠湾攻撃を仕掛けた開戦の年ですから公開は無かったのは当然でしょう。楽器が画面に大きくフューチャーされたりする予告編を見ると、観たい思いにかられます。
さてこの曲は多くのシンガーにカヴァーされました。ボクのオススメ、メル・トーメさんの動画は最後に取っておきますので、お忘れなく。
まずはペギー・リー。動画でTV出演時(1957年)がありました。なかなかチャーミングな歌唱ですね。この人のアルバム『ブラック・コーヒー』を聴いては、歌っている姿を想像していました。ベニー・グッドマン楽団と1941年に録音した音源もありますが、“歌うペギー・リー”見たさにこの動画を選びました。1922年生まれですから、御年35歳です。
2番目はイギリスを代表する歌手、シャーリー・バッシーの「ブルース・イン・ザ・ナイト」です。1957年の録音、ということは御年二十歳ですか。凄い歌唱力。
3番目は、ダイナ・ショアです。1917年のお生まれなので、1942年の録音時はまだ25歳の若さです。後に「青いカナリヤ」のヒットでお馴染みですね。
女性陣の最後の「ブルース・イン・ザ・ナイト」はエラ・フィッツジェラルド。これもレコード音源ですが、1961年録音ということは43歳の声ということですね。
さて男性陣による「ブルース・イン・ザ・ナイト」。なんといってもビング・クロスビーの1942年録音ヴァージョンが素晴らしい。
映像はSPをガラードのプレイヤーで再生しているSPマニア垂涎のものですが、関心ない方は78回転のスピートに目を回さないようお気を付けください(笑)。 ちなみに1901年生まれのビンクロさん、すでに40歳を超えていてなおこの初々しい美声。素晴らしい歌唱にしびれます。
キャブ・キャロウェイ御大が歌う珍しい動画「ブルース・イン・ザ・ナイト」です。「ミニー・ザ・ムーチー」以外を歌っているキャブさんを見るのはボクは初めてですが(笑)、収録年が不明なのでこの黒々とした髪にスリムな頬から推測するに、1946年あたりでは?御年40歳にしては若いかな(笑)。
はい、お待たせしました!popfreak推しのメル・トーメが歌う「ブルース・イン・ザ・ナイト」です。
1925年生まれ(日本流にいうと大正14年ですね。わが国で初のラジオ実験放送が始まった年)ですから、このライブの時にメルは57歳。円熟の境地に引き込まれます。
1982年、サンフランシスコ・ジャズ・フェスティヴァルでメル・ルイス・オーケストラをバックにしての歌唱です。(この時はすでにサド=メル楽団は解消していたのかな?)
地味な曲ながら、歌い手のテンポ感、スウィング感、転調のセンスが問われる難曲だと思います。
日本にもブルースがタイトルに付く名曲は多いですが、思いつくfだけでも「雨のブルース」「裏町ブルース」など一般名詞を冠したもの、「柳ケ瀬ブルース」「中の島ブルース」などご当地ブルース歌謡から、「恍惚のブルース」さらには「色彩のブルース」まで多彩なブルース揃いです。
それと初めて知ったのですが、黒沢明とロスプリモスのレパートリーにありました。「夜のブルース」。日本列島に鳴り響く「オール・ブルース」(マイルス・デヴィスでお馴染み)ですなぁ(笑)。
