この曲は「赤いお月さま」というタイトルで日本ではシャンソンとして知られていますが、元はイタリアはナポリの歌で、1952年に作られました。 

 

フランス語の歌詞をつけたのは、フェルナン・ボニフェというひとだそうです。ボクはカンツォーネでもシャンソンでもなく、タイトルがスペイン語だと思い込んでいて、ラテンポップスだと信じていました。 日本ではリシェンヌ・ドリールのヒット曲として知られたため、シャンソンとして知られていたようです。

 

 最初は、そのリシェンヌ・ドリールによるフランス語歌詞の歌唱です。   

 

シャンソンとしての知名度は、この人が歌ったことでも上がりました。越路吹雪の1954年の歌唱で、歌詞は日本語です。

 

という意味では、イタリア語で歌われるのがこの曲の正統派ということになります。クラウディオ・ヴィルラが1954年に歌ったミュージック・フィルムがYouTubeに上がっています。バックバンドも控えていて豪華な映像です。  

 

ヴィルラはこの曲のヒットで大歌手、レウッチョ(王様)と呼ばれ、1963年には騎士の称号を受けたそうです。日本に最初に始めて訪れたカンツォーネ歌手として知られ、1962年以来8回も来日しました。 

 

この曲が南米の曲に思えたのは、ブラジルのカエターノ・ヴェローゾが歌っていたせいかも知れません。1997年のステージでは、名手ジャキス・モレレンバウム(チェロ)もバックを務めています。  

 

やはりポップスが世界でスタンダードになるには、アメリカの歌手が歌って知られることが必要なのかもしれません。フランク・シナトラは「Blushing Moon」という英語タイトルと歌詞で、しかも巻き舌で歌っています。イタリア系であることの出自がなせる業なのでしょうか。  

 

最後は、ナポリ出身のカンツオーネ歌手ファウスト・チリアーノの「ルナ・ロッサ」。2000年のイタリアのテレビ出演時の映像です。

 

1937年生まれなのでこの時は63歳くらいですがギターの名手としても知られているようで、カンツォーネ歌手独特の張り上げる歌唱法ではなく、暖かみのあるバリトンでクルーナーとしても好感が持てます。  

 

知られざる名歌手が、探せば世界にたくさんいることに気づきます。学究肌で、13世紀から現代までのナポリターンの歴史を歌って絶賛を浴びる貴重な存在だったそうです。この映像からも人柄の良さが伝わってきますね。