数あるバカラック名曲の中で、隠れた名曲のイチオシだとボクが確信しているのが「Wives And Lovers」(邦題:素晴らしき恋人たち)です。
三拍子で、バカラックの持ち味であるフンワカした感のアレンジが素敵で、何度聴いても心ウキウキします。この桜の春の家籠りに聴いて、脳内イメージだけでも「見わたせば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける」の心境になってみたいものです。
この曲をヒットさせたのは、ボクの中学時代の英語の教科書に登場した人物と同性同名のジャック・ジョーンズ。1964年のヒットですが、バカラックの伝記によれば「わたしの思い描くアレンジとはちがっていたので、ジャックのヴァージョンは決して気に入っていない」そうですが、結果彼のヴァージョンはグラミーの最優秀ポップ・パフォーマンス賞を受賞したとのことです。ボクはかつてLPを聴いていた地味なシンガーだったJ.J.さん、まことにご同慶の至りです。
ジャック・ジョーンズと聞き分けがつかないくらいの(失礼!)アンディ・ウィリアムズも素晴らしい。この方のようなシンガーはもう出ないのでしょうか。なにを歌ってもアンディだと分かるのがスゴイ。
さてバカラックご本人もA&Mから発売した1973年のアルバムに収録しています。
面白いのは、フランク・シナトラとカウント・ベイシー楽団の「素晴らしき恋人たち」です。オリジナルの3拍子ではなく、なんと4拍子なのです。バカラックがアレンジしたクインシー・ジョーンズに電話した「Q,なんで4分の4拍子なんだ?あの曲はワルツだぞ」と訊いた。
するとクインシーからは「バート、ベイシーのバンドは4分の3拍子が弾けないんだ」との答えが返ってきたそうな。
アハハ、そういえばあのスウィンギーなベイシー楽団にはワルツは不似合どころか、演奏できないって。そうかな、これからLP棚に眠るベイシー楽団のレコードを片っ端からチョイ聴きして調べてみようっと。気分は筒美京平(笑)。
やはりこの曲を取り上げるのは、スタンダード曲をレパートリーにする男性歌手が多そうです。この人にも注目したいヴィック・ダモンですが、録音に立ち会ったバカラックによると、「レコードの仕上がりは最悪だった」そうです。なかなか気難しいねぇ、バカラックさん。
珍しく女性が歌っていました。いよー、ジュリー・ロンドンさん。この方の♪色香あらそう夜桜や、あら「京の四季」やおまへんか。ジュリーさんの着物姿を想像すると、ちょっと萌えます。フフフ。
初期のバカラック曲の良さに春の桜の気配を感じるpopfreakとしては、コロナよ心あらば、桜の花弁となって散って無菌化してくれはせぬかのぉ。
さすれば、春の心はのどけからまし、なのじゃが・・・。