アメリカ映画音楽の中でも「虹の彼方に」と並ぶ不朽の名曲の一つが「星に願いを(原題:When You Wish Upon A Star)」です。

 

以前ご紹介した『AFI's 100Years 100 Songs(邦題:アメリカ映画音楽ベスト100)』でも7位に選ばれていました。ディズニーの映画音楽の中でも1位。1940年のディズニーアニメの主題歌として広く知られており、コオロギのジミニー・クリケットが歌った。ここではジミニーの声優役クリフ・エドワーズが歌唱し、その年のアカデミー賞の歌曲賞を受賞した。

 

作詞はネッド・ワシントン、作曲はリー・ハーライン。とりわけネッド・ワシントンは、「ローハイド」「ハイヌーン」という勇壮な西部劇主題歌と並んで、「マイ・フーリッシュ・ハート」「ニアネス・オブ・ユー」「ボクはセンチになったよ」など多くのスタンダード・ナンバーの詞を世に贈っています。


劇中この歌を歌ったクリフ・エドワーズは、ウクレレ・アイクという愛称で呼ばれる人気タレント。本業のウクレレ奏者から、ジミニー役がきっかけで広く知られるようになったようです。

 

 

数多いカヴァーから、最初に選んだのはメアリー・マーティンの『ディズニー・アルバム』より。この人は、ブロードウェイ・ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』のマリア先生役(映画ではジュリー・アンドリュースが演じた)でこの作品を世界に広めたミュージカル界の大スター。導入部の語りが見事です。

 


次は女性シンガーの中からリンダ・ロンシュッタットです。1986年のTV番組で三日月に腰かける演出で歌っています。ちょうどこの頃、スピルバーグ監修の映画『アメリカ物語』で「Somewhere Out There」をジェイムス・イングラムとデュエットしています。こちらの曲は、バリー・マン、シンシア・ウェルのコンビ作です。

 


珍しいビリー・ジョエルのカヴァー。カートゥーンと実写混在の凝った作りの映像ですが、ディズニー人気者総出演です。いかにビリーがディズニー好きであったかが分かる素敵な映像。珍しくヴァースから歌うビリーの歌も味わいがあっていいですね。

 


次は、若き美声のジャッキー・エヴァンコが、ハスキー・ヴォイスのトニー・ベネットとのデュエット。親子、どころか祖父と孫のような組み合せですが、ホントウに素晴らしい。このような男女デュオは音域が合わないと成立しないことから、いかにトニーのキーが高いかを示していて感服します。

 


ディズニー名曲ばかりを集めて歌ったルイ・アームストロングのアルバム(記事冒頭の写真はマイコレクション)にも収録されていた「星に願いを」。ジャズの創設に重要な役割を果たした偉人なのに、ジャンルを問わずにレパートリーにする姿勢が音楽への愛が伝わってきます。

 


日本でもタイムファイヴほか多くのカヴァーがありますが、この曲のリクエストをいただいたDupinさんから矢沢永吉をご指名いただきました。素肌に白いスーツ姿の永ちゃん、カッコいい。ちなみに昨年秋に70歳で出した新アルバムもいいですよ。ボクが初めて買った永ちゃんのオリジナル・アルバムです。

 


デビューに至るシンデレラ・ストーリーが出来過ぎのように思えて、いままで余り聴かなかったスーザン・ボイル。この「星に願いを」はストレートで淡々と歌ってとても気に入りました。油抜き感(笑)がいいのかな?


ヴォーカルもの多々ありますが、ウタもの最後はジャズヴォーカル界のグレゴリー・ポーターの野太い声で「星に願いを」。グイグイ迫ってきて、ホントに願いがかないそうです。

 

 

この「星に願いを」をジャズ奏者が取り上げた録音も多くあります。リリカルでありながら、ジャズの進化にマイルスの裏で貢献したと言われるビル・エヴァンス。昨年の自伝的映画も素晴らしく、感激しました。ビルの1962年録音のアルバムから「星に願いを」を最後に。パーソネルは、ビル・エヴァンス(p)、フレディ・ハバード(tp)、ジム・ホール(g)、パーシー・ヒース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)です。

 


1940年のディズニー映画は、『ピノキオ』の他にも驚天動地の音楽映画『ファンタジア』を世に送っています。小津安二郎ならずとも、こんな作品を作るアメリカと戦争するなんて相手が悪いと思うのが普通ですよね。

 

年が明けてますますキナ臭くなるこの世界に、映画や音楽で人々にやすらぎを、と星に願いたい気分です。