カントリー音楽のメッカ、ナッシュヴィルに生まれたボビー・ヘブは、12歳にしてカントリー界の大物、ロイ・エイカフに招かれてグランド・オール・オープリ(カントリー音楽の祭典)に出演したそうです。栄誉なことですね。
次いでボ・ディドリーの伴奏者、ギターの名手チェット・アトキンスに師事するなど、実に華麗なる芸歴を持つソウル&カントリー・シンガーです。彼が1966年に公表した「サニー」は、その3年前に兄ハルが窃盗犯に殺された悲しみの中でこの曲を作ったそうです。
ただ、作ってからしばらくの間はこの曲を音楽出版社に渡す気にならなかったそうです。「サニー」なのに曲調がマイナーなのは、きっとそのせいなのですね。
最初は、ボビー・ヘブ自身のオリジナル盤です。この曲はビルボードの1966年間チャートで27位でした。
意外にもカヴァーが多く、ジェイムス・ブラウンがパリのオランピア劇場での公演で歌っています。相当古い録画なので画質は良くありませんが、動きはさすがのJB。熱く盛り上げる歌唱とアクション、それにブラスアレンジもパワフルで燃えますね。
ニューソウルの旗手と言われたマーヴィン・ゲイも1966年にカヴァーしています。すごくソフトでクール。「What's Going On」の誕生の伏線みたいです。
次は一時期ジャーマンディスコの雄として人気を博したボニーMの「サニー」。映像はライヴで、女3人+男1人の編成ですが、「「怪僧ラスプーチン」以外のボニーMを聴くのは初めてです(汗)。ジャーマンディスコは、シャコタンの車のオーディオで大音量で聴くのが正しい聴き方です(笑)。
かと思うと、イギリスで90年代突如として出現した鉄腕アトムのようなのシルエットをシンボルにした謎のユニット。JamiroquaiのJKが1995年に「サニー」をMontreux Jazzフェスで演奏しています。確かこのジャミロクワイを当時大プッシュしたのはユーミンでしたよね。90年代イギリスが生んだレアグルーヴの貴重な存在でした。
ボクが大好きだったのは、オランダのジャズ歌手Ann Burton & The Louis van Dyke Trioのアルバム『Blue Burton』収録の「サニー」でした。ただしYouTubeにはLPの正規ヴァージョンがアルバム全曲の中でしか聴くことができません。お手数ですが、冒頭から35:54まで飛ばしてご鑑賞ください。クールですごくいいですよ。
さすがの御大もこの曲は見逃していませんね。フランク・シナトラのカヴァーで「サニー」。
インストヴァージョン。パット・マルティニとジョン・スコフィールドがこんなメンバーで2002年にジャズフェスで演奏した映像がありました。メロがシンプルですが、ループ状に展開してステキです。
Pat Martino - guitar
John Scofield - guitar
Joey DeFrancesco - hammond
Byron Landham - drums
最後は、後年のボビー・ヘブ(v、g)がロン・カンターと共演した映像です。1972年です。
【異色な番外編】
意外やジャズソングの上手かった勝新太郎のアルバム『勝新太郎 夜を歌う』(1970年)から「サニー」。勝新さんと「サニー」の組み合わせは異色なので、苦手なかたはパスしてください。なおこの映像は適当に付けたものだそうです。座頭市ですものね。
なんだか悲しい、しかも理不尽な事件が多い今日この頃。なんで罪もない人たちが・・・と悔やまれますね。せめて心は「サニー」でいたいものです。