映画音楽に踊りがついて人気を博したのは、かつては主にミュージカル映画でした。とりわけ1961年公開の映画『ウエストサイド・ストーリー』を映画館で観た若者は、あの作品のシンボルマークとなった「Y字型」に足を上げる姿に憧れたものでした。
ポスターやサントラ盤のジャケットに使われたソール・バスの見事なイラストにも、映画音楽とダンスの新しい時代の息吹を感じのでした。その後の『ロシュフォールの恋人たち』(1967年公開)、70年代に入ってからは『サタデイ・ナイト・フィーヴァー』(1977年)と翌年の『グリース』など、新しい創作ミュージカル映画作品でも、劇中に曲が歌われる時のダンスが多くのファンを生みました。誰も彼もが踊りながら歌ってみたいと思ったのでしょう。そういえばジョン・トラボルタの踊りもマネ出来そうだし、オリヴァア・ニュートン・ジョンの動きなら私にも楽勝、という自信を与えたのかも知れません。
その後80年代に入って公開された映画『フラッシュダンス』(1983年)のダンスのオーディションシーンは衝撃的でした。到底素人にはマネできないジェニファー・ビールスのダンスを見て、踊ることを諦めた人も多いのでは(笑)ないでしょうか。
そのシーンに主人公が自分でLPをプレイヤーのターンテーブルに乗せて踊りに使った曲が「ホワット・ア・フィーリング」です。歌ったのは、アイリン・キャラ。あの華麗で激しいブレイクダンスを盛り込んだシャープな踊りに魅了された人が多かったと思います。まずはそのシーンです。
次は、ジニファーの陰に隠れてあまり顔が知られていないアイリン・キャラ。自身のテレビ出演時の歌唱です。なかなか歌唱力のあるシンガーですよね。(これは口パクです、笑。80年代くらいまでは、欧米のテレビは、ライヴ以外はほぼ口パクでしたから。)
ごのアイリン・キャア後年のライヴです。映像のカットが挿入されますが、ここまでのヒット映画の主題歌なので仕方ないでしょう。
なおアイリン・キャラは、1959年の生まれで8歳からラジオやテレビで活躍していたとのこと。9歳でブロードウェイにデビューして10歳でマジソン・スクエア・ガーデンで行われたエリントンへのトリビュートコンサートに呼ばれたそうです。
残念なことに、この曲=アイリン・キャラという図式ができていて、なかなかカヴァーはしにくいものでしょうか。全然無いのですよ、他の歌手の演奏・録音映像が。特にこの曲がオスカー獲得したのですがら、他のシンガーは手を出しにくいのでしょう。
しかし日本の歌手が歌い、テレビドラマ(大映です!)の主題歌として使われたこの映像は懐かしく思い出す人も多いのでは?堀ちえみ扮するスチュワーデス見習いが、教官の風間杜夫にしごかれる場面がウリでしたね。後に替え歌/パロディソングの嘉門達夫さんが、水難救助訓練でちえみさんが♪床の上でクロールする~と歌ったのが忘れられません(笑)。
スチュワーデス物語 麻倉未稀
それと、このアイリン・キャラの「ホワット・ア・フィーリング」をサンプリングしてリメイクしたのが安室奈美恵。3曲入りのミニCD『60's 70's 80's』と題して、60年代はシュープリームスの「ベイビー・ラヴ」を、70年代はアレサ・フランクリンの「ロック・ステディ」を、そして80年代からはこの曲をそれぞれサンプリングして別の曲(タイトルが違うのは「ベイビー・ラヴ」が「New Look」で、この1曲のみ)が付いています。
このMVが3曲とも実にカッコいい出来栄え。思わずDVD付きを買ってしまいました(笑)。
安室奈美恵、「ホワット・ア・フィーリング」のMVです。ただしYouTubeには1分のみの映像しかありませんが。
70年代後半のディスコ時代を制した音楽プロデューサー、ジョルジオ・モローダーがプロデュースしたサウンドが世界的なヒットにつながったのでしょう。
それにしても80年代に入ってから、ヒット曲のカヴァー録音が少なくなってきたのが残念でなりません。かつては「ムーンリヴァー」がアカデミーにノミネートされた時に、ヘンシー・マンシーニがアンディ・ウィリアムズに会場で歌ってほしい(映画で使われた歌ものは、オードリーの本人歌唱と女性コーラスのみ)と要請したそうですから、その頃からすると時代は変わったのでしょう。
一つの曲を多くの歌手が歌う、それらを聴き比べる楽しみがわがブログの目的なのですから・・・。