原題が「Buttons And Bows」、これを誰が言ったか「バッテンボウ」。長崎バッテンかと間違うくらい日本語的発音で聴いたのは、誰の歌だったのでしょうか。

 

池真理子や江利チエミが日本語でカヴァー。語呂のいい♪バッテンボウと軽快なリズムとが相まって、戦後の洋楽ポピュラーソングの代表曲の一つとなりました。


でも「ボタンとリボン」とくればこの人が大本命。ダイナ・ショアが本国でレコードを発売したのが、1949年8月だったそうです。まずはレコード・ヴァージョン。

 


次は1960年代と思われるテレビ映像です。歌うダイナ・ショアは珍しいかもしれませんね。伴奏にアコーディオンが使われているのは、この曲が最初に使われた映画の影響かもしれません。

 

 

さてその映画はボブ・ホープ主演の『底抜け二丁拳銃(原題:The Paleface)』(1949年公開)で、その中にBob Hopeが一人でアコーディオン(バンドネオンっぽい)を弾いて歌うシーンです。

 


さきほどの動画の2分少し前からの映像と同じですが、映画主演の3人が歌唱する場面のみの映像もありました。

 

ここではヴァースから歌われ、ジェーン・ラッセル、ロイ・ロジャーズ、それにボブの3人で歌うシーンです。こちらは1952年の続編『底抜け二丁拳銃の息子』の場面から。

ちいなみに3人歌唱の場面でボブが入れる合いの手は、まるで今のラップみたいですね。ボブ・ホープの底抜けシリーズは大人気でしたね。ボクはリアルタイムじゃありませんが(笑)。、

 


さて「ボタンとリボン」のカヴァー盤も名唱が多くありますが、まずはポピュラー歌手代表のジョ・スタッフォードの歌唱は本当に端正で素晴らしいです。

ジョ・スタッフォードとザ・スターライターズの録音です。リズム感もいいですねぇ。

 


次はカントリー部門の大御所、ジーン・オートリーの「ボタンとリボン」です。鼻にかかった歌いっぷりが、いかにもカントリーシンガーです。

 

 

わが池真理子の録音もYouTubeに上がっていました。戦前に宝塚で活躍したひとでもあります。

 

 

珍しいTV映像が見つかりました。なんとナンシー梅木がジゼル・マッケンジーのショウ(テレビ)に出演したときに、ジゼル・マッケンジーとデュエットで「ボタンとリボン」を歌っています。しかもナンシーはソロの2箇所は日本語で歌っています。さすがジャズ・シンガー、歌唱力は抜群ですね。1958年3月29日のことです。


このエンディングも「シャル・ウィ・ダンス」で楽しい番組みたいです。

 

 

さてこの曲は、レイ・エヴァンス作詞、ジェイ・リヴィングストン作曲で前述の映画『底抜け二丁拳銃』のために作られたものですが、レコード化が早かったのは1947年のエヴリン・ナイトです。

ヴァースから歌っていて、ダイナ・ショアなどと違い、テンポが遅いですね。

 


いろいろ聴いてくると、ダイナ・ショアの軽快なレコードヴァージョンがあってこそ「♪バッテンボウ」が日本でもヒットしたような気がします。

 

戦後の暗い世相を明るく変えた「東京ブギウギ」と同じようなハイな気分をもたらしてくれた大切なヒットソングです。


余談ながら、池真理子が結婚した相手は鈴木勝で、この人は「東京ブギウギ」の作詞を手掛けた人です(とはいえ大半は作曲の服部良一が書いたそうですが)。ちなみに仏教哲学の鈴木大拙のご子息とのこと。これも戦後の明るい歌2曲にまつわる何かの因縁かもしれませんね。