1969年、マイルス・デヴィスは時代を揺るがすアルバム2作を世に送って従来のジャズ・ファンを驚愕させました。
1作目が7月に発売された『In A Silent Way』、2作目が1969年8月に開催されたウッドストック・フェス(正式にはWoodstock Music and Art Festival)のとまったく同じ日程で録音した『Bitches Brew』です。
以前からマイルス・グループは次代を担うアーティストを輩出し続けてきましたが、この2作品に参加していたチック・コリアもその内の一人。1972年に自己のグループ、リターン・トゥ・フォエヴァーを結成して同名アルバムを発表しました。
このグループのファースト・アルバムの参加ミュージシャンは、以下の通りです。
チック・コリア - エレクトリックピアノ
ジョー・ファレル - サックス、フルート
スタンリー・クラーク - ウッド・ベース、エレクトリックベース
フローラ・プリム - ボーカル、パーカッション
アイアート・モレイラ - ドラムス、パーカッション
本日のお題「スペイン」は、同じ年1972年に録音されたリターン・トゥ・フォーエヴァーの2枚目のアルバム『Light As A Feather』の最後に収録されている10分弱の大作。聴いたことがある方はお分かりのように、ホアキン・ロドリーゴのギター協奏曲『アランフェス協奏曲』(1940年初演)のテーマをアダプテーションしたものです。
最初は、1975年の'Down Beat' poll-winners'コンサートのライヴ映像です。ただしメンバーはファーストアルバムとは一部違って以下の通りです。
Chick Corea - keys
Hubert Laws - flute
Bill Watrous - trombone
George Benson - guitar
Stanley Clarke - bass
Lenny White - drums
クインシー・ジョーンズが紹介しています。
歌もの好きのpopfreakとしては、まずはアル・ジャロウのヴァージョンを挙げたいと思います。早口言葉(笑)的な超絶歌唱です。収録は1990年のライヴ・アンダー・ザ・スカイ、日本での公演の模様です。思えばアルさんも昨年2月に亡くなりましたね。
超絶技巧ヴォーカリーズとくれば、この人が現役では代表選手だといえるでしょう。「ドント・ウォーリー、ビー・ハッピー」(1988年)でグラミー賞を受賞したボビー・マクファーリンが、ヴォーカリーズででチック・コリアとデュオしています。
2012年の映像です。ヴォーカリーズといえば、エディ・ジェファーソン、ジョン・ヘンドリックスも忘れられませんが、いまや知る人も少なくなってしまいました。
さすがにこの難曲を歌やヴォーカリーズで演奏した人は多くありませんが、われらが久保田利伸さんがカシオペア+土岐英史(アルトサックス)をバックにテレビ番組で歌った映像を見つけました。感激です。
久保田利伸&Casiopea(野呂一生、向谷実、櫻井哲夫、神保彰)& 土岐英史(Alto Sax)
なお土岐さん(麻子さんのお父さん)の5分あたりからのソロ~久保田さんのスキャットに繋がる箇所が実に素晴らしい。飛ばさずに観ていただきたく。なおこの「Spain」の編曲は野呂一生さんです。
この番組は「Music Party金曜スペシャル」とクレジットされていますが、どういう番組だったのでしょうか。テレビが大人向けの音楽を取り上げることができた良い時代の香りがします。そういえばボクは『今夜は最高!』も大好きでした。日本テレビ、頑張ったよね。
最後は最近のチック・コリア・トリオの演奏で締めましょう。最近は映像のクレジットを掲載するようになったYouTubeからの引用です。
Chick Corea (pf) Steve Gadd (ds) Christian McBride (b)
Recorded live at The One World Theatre in Austin, Texas April 3, 2005
3:30あたりからのPianoソロがステキです。
レーベルは、Stretch Records / Universalだそうです。
マイルスのCBSレーベルの初期の傑作アルバム『スケッチ・オブ・スペイン』(1960年)を連想する人も多いことでしょう。題材としては同じ「アランフェス」です。
そのアルバムのアレンジャーは“クール”を代表するギル・エヴァンス。チック・コリアがこの題材(曲想)や編曲をモチーフに「スペイン」を作曲したのかどうかは、いまだにボクには謎なのです。