「Who Can I Turn To」とくればトニー・ベネット、と反射的にでてくるのですが、この曲がミュージカルの挿入歌とは知りませんでした。
そのミュージカルとは『ザ・ロアー・オブ・ザ・グリースペイント-ザ・スメル・オブ・ザ・クラウド』(邦題:ドーランの叫びー観客の匂い)でブロードウェイのシューバート劇場で公演された回数は232回ですから、ヒット作とは言い難いものなのでしょう。しかもそこで歌ったアンソニー・ニューリー自身が作家2人の内の1人だったとは。
彼はロンドン生まれでミュージカル俳優でもあり、そのニューリーによる非常に個性的な表現力で歌唱されたものがYouTubeの『エド・サリヴァン・ショウ』で見られるとは思ってもいませんでした。
まずはその個性的なアンソニー・ニューリーの、いかにもキングズ・イングリッシュな歌唱「フー・キャン・アイ・ターン・トゥ」です。
もちろん定番のトニー・ベネットの歌唱はたくさん上がっているのですが、素晴らしかったのはクイーン・ラティファとのデュエット。一連のデュエット・アルバムに収録されていて、余りに素晴らしく、後に出たラティファのソロ・アルバムを買ったくらいです。
クイーン・ラティファとトニー・ベネット
マット・モンローとくれば、♪from Russia with love~と朗々とした歌唱を思い出しますが、これを聴けば王道のポピュラー・シンガーであることが分かります。
ボクの大好きなサミー・デヴィスJrの「フー・キャン・アイ・ターン・トゥ」も素晴らしい。
かと思えば、キング・オブ・ザ・ソウルのジェイムス・ブラウンが歌っていてビックリ。アルバム『リアリティ』(1974年)に収録されています。
歌詞の内容は、「誰にも必要とされなくなったら、誰を頼ればいいのでしょう」「最愛の人がいなくても、私は運命の導くところに進んでいきます」と神に訊ね、神に答えることだと分かるとJ.B.がレパートリーにする意味が分かろうというもの。J.B.といえばどうしても映画『ブルース・ブラザーズ』の神父さまの連想から抜け出せないのですよ(笑)。
力強いJ.B.から一転して、脱力系女性シンガー、アストラッド・ジルベルトです。ボクもこのヴァージョンはLPで良く聴きました。この人の風のような歌い回しがとても好きなのです。
女J.B.とは言い過ぎでしょうか。次はシャーリー・バッシーによる対照的(笑)絶唱です。
実は多くの女性歌手の中で、ボクはカーメン・マクレエが大好きなのですが、YouTubeに上がっているヴァージョンを聴くとなぜか最終選考から外してしまうのです。久しぶりにカーメンの「フー・キャン・アイ・ターン・トゥ」選びました。ストリングスをバックに丁寧なる歌唱。1965年にドン・セベスキー指揮(といえばCTIのオシャレアレンジを思い出す)のオケがバックの録音です。
最後はこの名曲をビル・エヴァンスが1965年の5月に演奏した映像がありました。相変わらずピアノに顔を埋めるように弾いています。この映像を見るにつけ、ボクが若き日にロンドンの「ロニー・スコッツ」で観たビル・エヴァンスの演奏スタイルを思い出します。
気が付くともうすぐ5月。翌月の6月には、ボクがこのブログをスタートしてから満10年を迎えます。「うーむ、10年か」と自分でも驚くほどですが、書いた記事は600有余なのでまだまだ駆け出し。
好きな音楽・お気に入りの曲が尽きるまでは続けようと思っていますのでお付き合いください。この曲の歌詞のように、誰にも必要とされなくなるまでは、ね。