新しい記事に取り上げる選曲に苦労していたら、意外や「朝日のあたる家」を取り上げていなかったことに気づきました。

このブログを読んでいただいている方で、この曲を知らない人はいないでしょう。それほど知られた曲ですが、古い録音を辿っていくと謎が多い曲でもあります。

 

これから3回に分けて、「朝日のあたる家」を取り上げてみたいと思います。


最初はなんといっても世界的にこの曲をヒットさせたエリック・バードンとアニマルズです。YouTubeを検索していたら見事にクリーンな動画を見つけて感動しきり。パワフルでソウルフルなエリック・バードンにしびれてください。

 

ビルボードチャートの1964年度、年間38位にランクされています。

 

 


日本でこの曲を広めたもう一つのバンドはベンチャーズでしょう。このライヴ動画は1997年、日本公演の模様です。

 

 

 

「朝日のあたる家」(原題: The House of the Rising Sun)は、アメリカ合衆国のトラディショナルなフォーク・ソングで、最も古いとされるのはクラレンス・アシュレイらが1933年に録音してヴァージョン。アシュレイはそれを祖父から教わったものだといわれています。

 

また、アラン・ロマックス(注1)がアメリカ議会図書館のアーカイブ・オブ・アメリカン・フォーク・ソング (Archive of American Folk Song) の研究員だった頃に収集した音源にも、16歳の少女が歌った "The Risin' Sun Blues" が録音(1937)されているとのこと(これは見つけられませんでした。残念!)。

 

その後この曲を、1941年にウディ・ガスリー、1948年にレッドベリー、1960年にジョーン・バエズが録音しています。

 

検索していたら1933年9月6日にクラレンス・アシュレイとグウェン・フォスターが録音した記録上最古のヴァージョンが見つかりました。YouTubeにはなんでもあるなぁ、と感激。

 

しかしながら、これを聴くとビックリ。アニマルズ盤とは相当違いますね。驚いたのはキーとなるコードがメジャー(長調)であること。アニマルズは、マイナー(短調)・コードに終始しています。本来明るい歌ではないのに、メジャーとは・・・。これが謎のその1です。

 

 


次にフォークの父とでもいうべきウディ・ガスリーの音源です。ここに第2の謎があります。さきほどのアシュレイ盤では3拍子だったリズムが、フォーク・ソングの典型である4拍子に変わっています。これはウディの改変なのか、あるいは誰の手になるものか・・・。うーん、謎は深まるばかりです。

ウディ・ガスリーの4拍子、かつメジャーコードによる「朝日のあたる家」。おまけにところどころ弾いてるコードも間違っている?ようですが、それがいかにもウディ的といえばそれまででしょうか。

 

 


そのメジャー&4拍子盤を踏襲した盲目のカントリー・シンガー、伝説のドク・ワトソンも軽快に歌っています。歌詞の暗い内容を感じさせないフォーク/カントリー系の明るく楽しい歌唱・演奏です。

 

 


ところがウディ直系のお弟子さん、ピート・シーガーは師匠とは別アプローチのマイナーコードでバンジョーを弾き語っていました。しかもリズムは3拍子。先生に反発しているみたいです。

 

 


私が調べた中で、最も聴きたかったレドベリーのヴァージョンもありました。原曲通りの3拍子ですが、メジャー・コードで歌っています。ギターもコードが間違っているように思う箇所があるのは、ボクが聴きすぎたアニマルズ(のマイナー・コード)がこの曲の原点にあるからなのでしょうか?うーむ、謎です。

 

 


かつて大好きだったNHK-BSプレミアムの音楽番組『名曲探偵アマデウス』にならって、『名曲探偵popfreak/「朝日のあたる家」の謎‐その1』今日はここまでということで。

 

(注1:アラン・ロマックスは、アメリカの民謡研究家。1930年代からフィールドワークによってアメリカ各地に伝承されてきた歌を発掘しました。後にアメリカ以外の国でも活動しています。発掘した中の多くのうちこの曲もその一つですが、歌い手を発掘したことでも功績があり、刑務所に服役中のブルース歌手レドベリーの歌唱を録音・採譜し、後に歌手として再生(更生)させたことでも知られています。)