今日のブラジル音楽ネタは、パーカッションとして有名なビリンバウ。これはカポエイラという格闘技の伴奏に使われる1弦の楽弓だそうですが、ボサノヴァ好きな方にはこの人が歌った曲の冒頭に流れる不思議な音色に聞き覚えがあるはずです。

ボクもあの脱力系歌手でこの曲を愛聴していました。その冒頭の♪ベンベンと鳴るまるで琵琶のような楽器です。

元祖脱力系アストラット・ジルベルトです。

 


曲の「ビリンバウ」を作ったのは、ヴィニシウス・ヂ・モラエス(作詞)とバーデン・パウエル(作曲)です。


YouTubeにバーデン・パウエルがこの曲を独奏するモノクロ動画がありました。開放弦を1音下げるチューニングとギター運指が見事です。ただしリンクのみですが。

 

次は、アストラッドとは全く別のアプローチによるジョイスの歌唱。ボサノヴァ第二世代と呼ばれる彼女ですが、実にリズム感が抜群で歌もテンポ軽快で素晴らしいです。活力系(笑)ブラジル歌手でしょうか。


かのセルジオ・メンデスとブラジル66もカヴァーしています。

 

 

YouTubeで見つけた映像がまた素晴らしい。1979年ごろに収録されたものでTV出演時のようです。

 

作詞したヴィニシウス・ヂ・モラエスがなぜか講演台のような机の前に座り、マイクで歌っています。ヴィニシウスの歌唱シーンは貴重だと思いますよ。

それにアントニオ・カルロス・ジョビンがピアノ&コーラス、ギターはトッキーニョ、女性ヴォーカルはミューシャが花を添えています。

曲は「Berimbau (2分20秒くらいまで)」と「Canto de Ossanha(英語題;Let Go)」のメドレーです。前半を主にお聴き下さい。ただ後半にはジョビンがピアノとコーラスで大きくフューチャーされています。

 

 


今回のリオ五輪のキャラの一人になったヴィニシウスは、ボサノヴァの立役者3人のうちの一人です(後の二人はジョビンとジョアン・ジルベルト)。

なにしろ詩人なのに駐仏ブラジル大使を勤めていた異才の人で、結婚を9回(だったかな?)している恋多きブラジル男。

リオのオリンピックの開会式でジョビンの孫がピアノと歌で「イパネマの娘」を歌い、会場をブラジルのスーパーモデルが闊歩するシーンに壁面に映し出されていたのがアントニオ・カルロス・ジョビンの写真でした。それを見ていたヴィニシウスの遺族が「ジョビン一人では不公平だ。ジニシウスの写真も掲示すべきだ」訴え出たというニュースも伝わっていましたね。キャラにもなった人なのですから。

またヴィニシウスは、映画『黒いオルフェ』(ブラジルとフランスの合作映画)の原作者でもあります。

この偉大な作家を忘れちゃいけませんよね、ブラジルの国を挙げて讃えてあげて欲しいものです。

またバーデン・パウエルは超絶技巧のギタリストでもあり、知られるところでは映画『男と女』の劇中に流れる「サンバ・サラヴァ(邦題「男と女のサンバ」)」の中で、歌っているピエール・バルーがアーティスト名を呼び上げますが、
バーデン・パウエルと並んでヴァニシウスの名前も、もちろん入っていますよ。