最近、マイブログで取り上げる楽曲の振り幅が大きくなってきました。スタンダード曲からポップスへ、またロックがあるかと思えば次は映画音楽と迷走気味です。ボクの音楽体幹が定まらない理由については自分でも不明ですが、春のせいとでもしておきましょう。

今日のお題は、ジャズの革命をつき進んできたマイルス・デヴィスのモード奏法の決定曲「ソー・ホワット」です。この曲でなにが決定的になったかというと、ジャズがコードからモードへシフトチェンジしたことです。


ただし「モード」を説明するのは、ボクには至難のワザ。その辺りはジャズ界の論客、菊地先生にでもお願いすることにして、ボクにも分かることは「ソー・ホワット」を境にして、マイルスをめぐるジャズ・ミュージシャンの「旋法が変わった」ことです。

メロディが連なって演奏されることが主流となった、とでもいいましょうか。コルトレーンがそれを引き継いだといえば、なんとなく分かったような、分からないような(笑)。ジャズ評論家アイラ・ギトラーが“シーツ・オブ・サウンズ”とよんだあの連綿たる音の連なり。これがマイルスが開発して、マイルス・グループの門下生コルトレーンが到達した「神ジャズ」の領域とでもいいましょうか。


YouTubeには、貴重な1959年4月2日のマイルス・グループの演奏があります。ニューヨークのホールのオーナーであるロバート・ヘリテージが解説するテレビ番組。

ジャズがモードに変容したといわれるアルバム『カインド・オブ・ブルー』の録音から間もないころです。強力な出演メンバーは以下の通りです。

Miles Davis - trumpet
John Coltrane - tenor sax
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums
Gil Evans - conductor - Gil Evans Orchestra



これを見ると、クール~モードへの歩みの陰にはギル・エヴァンスありきが決定的だと思います。クロード・ソーンヒル楽団の専属時代からギル・エヴァンスの紡ぎだす静謐で緊張感あふれるクール・サウンドは、マイルス・デヴィスに引き継がれ、コルトレーンが完成させたと納得してしまいます。



トランペットの技法では、さほど切れ味が鋭くなく、どちらかといえば人間味溢れるチェット・ベイカーの演奏も味わいがありますが、モード・ジャズを云々するタイプのプレイじゃありませんね。でも好き、って人が多いのがこの人の特徴。ダメ男加減に惹かれる女性も多いようですね。





ボクも長らく抱いてきたジャズへの興味が薄らいでいた90年代。アシッド・ジャズの文脈で登場した軽めのロニー・ジョーダン(g)の「ソー・ホワット」に心躍った記憶がよみがえってきます。CD買ってよく聴いてました。でもロニー・ジョーンダンも数年前に亡くなったのですよね。




次は、同じギターでもフュージョン王道のラリー・カールトン。1997年の演奏です。メロディを弾くスピードがメチャ早やです。




今また大活躍のマーカス・ミラー(ベース)もやっています「ソー・ホワット」。思えば、マイルスのアルバム『カインド・オブ・ブルー』1曲目のオリジナル・ヴァージョンでは、ポール・チェンバースのベースがメロディを演奏しているのですから、
本当に意表を突かれますよね。その斬新さ。マーカスとしては、表舞台に躍り出たポールのベースに啓発を受けたのかもしれません。




最後は、門下生がこぞってマイルス・トリビュートに参加して、このジャズ史に輝くマイルスの時代を作った1ページに心からのオマージュを捧げています。

メンバー:Herbie Hancock, Wayne Shorter, Wallace Roney, Tony Williams, Ron Carter from "A Tribute To Miles Davis" munchen '92




かくしてマイルスが去ってもう20年以上が経ちました。その後のジャズ界にも新たなプレイヤーが登場していますが、特徴としてはジャズ育ちではなく、ヒップホップを聴いてきた世代が中心です。

その中でも注目すべきはロバート・グラスパー(key, arrange, prodece)です。今後もグラスパー一派から目を離せません。