この二つの演目・曲目は、文学・音楽・演劇の奥深さをみるがごとし。
ボクのように、一時は「毛皮のマリー」と「毛皮のヴィーナス」を混同するようようでは、フランス文化を語る資格はないと知りつつも、ちょっと怖いものみたさで覗いてみたくなりました。
まずは「毛皮のマリー」から。
1956年、ロジェ・ヴァルネ作詞、マルク・エイラル(本名エルシェコヴィッチ)作曲で、イヴ・モンタンのレパートリーとして知られるナンバーです。
ミンクのマントに目がくらみ、今は落ちぶれて虫食いだらけのミンクに昔を懐かしむマリーの物語を、モンタンは実に軽快に歌っています。日本でもレパートリーにしているシャンソン歌手が多かったですよね。
まずは本命盤、イヴ・モンタンの「毛皮のマリー」
次は珍しいジャクリーヌ・フランソワのテレビ出演時の映像。もちろん口パクでしょうが、歌うお姿を観るのは初めてで、ちょっと嬉しい。
ジャクリーヌ・フランソワ 1963年のモノクロ動画です。
さて、怖いものみたさと興味は深々なれど、やはりボクのように観に行く勇気がない人向けの演劇紹介のDVD予告編。これだけでもちょっとドキドキ(笑)。
この作品『毛皮のマリー』は、寺山修司が美輪明宏のために書き下ろした演劇です。
次は、一時ボクが気に入っていた日本のロック・バンド、毛皮のマリーズで「愛のテーマ」。曲は両作品とは別物のロック・ナンバーですが、志磨遼平の特異なパフォーマンスに惹かれていました。CDを買ったらすぐに解散したので、ガッカリした記憶があります。
さて、次はポランスキーの映画で驚愕のでき映え『毛皮のヴィーナス』。 アメリカの劇作家デヴィッド・アイヴスの同名戯曲が原作とのことですが、その戯曲の原作はレオポルド・フォン・ザッヘル・マゾッホの小説(1871年)を元にしています。
マゾッホ、つまりマゾヒズムの語源となった作家だそうです。
正確には『毛皮を着たヴィーナス』というタイトルですが、出演者がたった二人だけで、オーディションにやってくる女優を演じたエマニュエル・セニエの存在感に圧倒されまくった映画でした。
では、ポランスキーの映画『毛皮のヴィーナス』予告編です。これだけでも伝わってくるものがありますね。
19世紀から連綿とつながる「毛皮のヴィーナス」を1960年代にロック・グループで歌にしたのがルー・リード。
その伝説のグループ、ヴェルヴェット・ウンダーグラウンドの代表アルバム、通称『バナナ』の4曲目に収録されていますが、このグループのプロデューサーは、アンディ・ウォーホール。作って歌ったのがルー・リードで、2013年に71歳で亡くなっています。
毛皮のヴィーナスからマリーへ。
これらを題材に取り上げる方たちの濃さは、時代の深さを感じさせてくれます。もしかして、横浜の伝説的存在『横浜マリー』の物語も「毛皮のマリー」を下敷きにしたノン・フィクションなのでしょうか。
なお、マゾとサドにご興味あるむきは、松岡正剛氏のブログ『千夜千冊』「毛皮を着たヴィーナス」をお読みください。
⇒松村正剛氏のブログへのリンク