1932年にロレンツ・ハート(作詞)とリチャード・ロジャーズ(作曲)のコンビが、映画『Love Me Tonight』(邦題『今晩は愛して頂戴ナ』)のために書いた佳曲が「ロマンティックじゃない?」。この二人のコンビは、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」など多くの名曲を残しています。

その映画のシーンは最後に残しておいて、と。数多くのカヴァー録音や演奏が残されています。


まずはボクの大好きなメル・トーメです。端正にヴァースより歌った1955年の録音です。 




次に思いっきり“ロマンティック”な歌唱を持ち味に広く愛された名歌手、ジョニー・マティスのネットリ系ヴォーカルにもそそられますね。(なおこの静止画は、ヘップバーンの映画『麗しのサブリナ』で、その映画でもこの曲が使われたことを示しています)





歌ものの録音は数々ありますが、リチャード・ロジャーズの美メロを演奏するビル・エヴァンス・トリオの素晴らしさ。ただしこの映像はなぜかその映画の主役を演じて歌唱もしたジャネット・マクドナルドのヴァース部分だけがイントロ的につないであって謎??ですが・・・(笑)。




次は本業のトランペットをけだるく吹くチェット・ベイカー(ただし歌なしです)で。




ハーモニカといえばこの人。ツーツ・シールマンスの演奏も素晴らしいです。




歌ものに戻ると、やはりこの人の歌唱は外せませんね。エラ・フィッツジェラルドで。




さて最後は、その映画『今晩は愛して頂戴ナ』(1932年)に初めて使われたシーンです。6分ほどありますが、実に洒落ていて面白い。主役のモーリス・シュヴァリエから始まって、ジャネット・マクドナルド(ジャネット姫)へと次々と歌い継がれるシーンです。

順番は、仕立て屋(シュヴァリエ)~客(バート・ローチ)とのデュエット~ローチの歌を聴いた男が乗ったタクシーで歌い、その運転手がほかの客に歌う~その客が列車に乗って歌唱~列車に乗っている兵士が歌い~兵士が行進時に歌う~それを聴いたジプシー・ヴァイオリン弾きが演奏~最後に城のバルコニーにいるジャネット姫に伝わり歌われます。風が吹いたら桶屋が・・・とはちょと違いますが、とっても面白いシーンです。(冒頭42秒のあたりでIsn't It Romantic?とシュヴァリエがいうところからスタートします)





この映画『今晩は愛して頂戴ナ』に関する資料を調べていると、面白い比較論に出くわしました。

シュヴァリエの歌「Isn't It Romantic?」が次々とシーンを展開して歌い継がれるさまには元ネタがあるというのです。

その元ネタとは、1931年のドイツ映画『会議は踊る』で主人公の下町娘リリアン・ハーヴェイが、ウィーン郊外の別荘に向かうシーンで、沿道の人々に向かって歌い、合唱し、ダンスする「ただ一たびの」(原題:Das gib't nur Einmal)の場面展開に酷似しているのだそうです。

探してみたらありました。YouTubeの映画『Der Kongress Tanzt』のなかの一部、この動画の2分30秒からの楽しい場面をご覧いただきたいと思います。




ボクの勘違いのお詫びに、80年以上も前の♪ダス・ギプト・ヌル・アインマール・・・で楽しくお過ごしください(笑)。