トニー・ベネットのアルバム『Duet II』3曲目の「ボディ・アンド・ソウル」は、パートナー、エイミー・ワインハウスのラスト・レコーディングとなりました。

27歳の若き才能を悼む声のなかで、トニー・ベネットは、レコーディングに際して彼女にドラッグを断つべきだと言いたかったがその機会がなかったと悔やんでいます(ライナーノーツより)。

皮肉なことに、この「ボディ・アンド・ソウル」は、かつてドラッグで苦しんだビリー・ホリデイの絶唱で知られる名曲です。

エイミーの前にビリー・ホリデイを聴いていただければ、いかにエイミーが影響を受けたかがお分かりになると思います。

ビリー・ホリデイ 1957年の録音。歌のクセがかなり強くなってきている後期のヴァージョンです。この2年後の1959年7月17日、ビリー・ホリデイは44歳で亡くなります。




エイミーがトニー・ベネットに向ける熱いまなざしは、彼女の助けを求める気持ちを表しているのではないか、という解釈は深読みのしすぎでしょうか。

エイミー・ワインハウス (VEVOサイトの動画になり、CMが入るかもしれません。ご容赦)




「ボディ・アンド・ソウル」は、1930年に作られた古いナンバーです。これもミュージカルで使われたのですが、その後のカヴァー録音の多さは、この曲がいかにジャズ・プレイヤーやジャズ歌手に愛されたかを示しています

♪私の心は あなたのために悲しく寂しい
私のため息はあなただけのため。
なぜあなたはわかってくれないのだろう。私はあなたのもの、
身も心も・・・・


という切ない歌詞です。


次はアニタ・オデイが、粋にフェイクしながら歌っているテレビ番組から。(前半におしゃべりがありますが・・)




この歌詞でお分かりのように、ほとんどが女性歌手のレパートリーとなっているのですが、わが敬愛するメル・トーメが流れるストリングスをバックに切なく、スムースに歌っています。必聴です。


メル・トーメ 




歌なしヴァージョンのジャズ演奏では、「ボディ・アンド・ソウル」といえばこの人。30年代から活躍していたサックスの巨人、コールマン・ホーキンスの代表作だといわれています。ビー・バップ前夜の骨太な緊張感にあふれる演奏ですね。

コールマン・ホーキンズ




資料によれば、ヴォーカリーズのテクニシャン、エディ・ジェファーソンがコールマン・ホーキンズを讃えたヴォーカリーズ・ヴァージョンがあるらしいですが、未聴にして。またYouTubeでも見つけられませんでした。残念。



さてジャズ演奏での最後は、ピアノのテディ・ウィルソン。ベニー・グッドマン楽団など、スウィング時代からパップへの過渡期を支えた名バイ・プレイヤーです。

テディ・ウィルソン




いままでに亡くなってしまった多くの素晴らしい音楽家たちにボクたちはこんなに楽しませてもらったのに、ブログでご紹介することでしかお返しできないもどかしさを痛切に感じています。



今日ご紹介したミュージシャンでいまも元気なのは、85歳のトニー・ベネットただ一人。これからもがんばってほしいと切に願っています。