
1982年、スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンはソロ・アルバム『The Nightfly』を発表しました。
皮肉にも、CDが世に出たのと同じ年に完成したこの“超高音質”アルバムのサウンドは、ポピュラー音楽におけるLP芸術の最高峰といっても過言ではありません。もちろん収録された8曲のうち7曲はドナルド・フェイゲンの作なのですが、残る1曲はカヴァーなのです。
「ルビー・ベイビー」。ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの黄金コンビが作った名曲のひとつです。なぜドナルド・フェイゲンが自作アルバムにこの曲をカヴァーしたのか、その理由は判りませんが、最初の発売時に即刻LPを買って以来熱烈に愛聴し続けたボクにとって3曲目に収録された「リビー・ベイビー」抜きでは、『The Nightfly』は語れません。
Donald Fagen
この8月にジェリー・リーバーが亡くなったばかり。その時に多くの記事で紹介されましたのでここでは詳述しませんが、このコンビがコースターズを始めドリフターズなどに多くの曲を提供しました。そのドリフターズのオリジナル・ヴァージョンが、ドナルド・フェイゲンの元になっているそうです。
Drifters 1958
白人作家が黒人アーティストに曲を提供する時代、もちろん白人歌手が「ルビー・ベイビー」をヒットさせています。ポップ・シーンにおいては、このディオンのヴァージョンのほうが有名かもしれません。
ディオン
ディオンは、60年代に「ジョニー・B・グッド」(おなじみチャック・ベリーの代表曲)や「ドリーム・ラヴァー」(ボビー・ダーリンのヒット)を後追いカヴァーしているイケメン歌手ですが、オリジナル・ヒットには恵まれなかったようです。
またブラック・ミュージックのカヴァーが多いビートルズですが、このナンバーも録音しています。もちろんビートルズがトニー・シェリダンとハンブルグで活動していた時代のレア録音(『アーリー・ビートルズ』より)です。
最後はこの人。アイスランドの妖精、ビヨークで「ルビー・ベイビー」。実に不思議な世界を醸し出しています。ボクもビヨークのアルバムは多数持っていますが、あまり聴き込むことが少ないのが不思議なのですが・・・。
ビヨーク(レイキャビクにて、1990年)
【余談】
ドナルド・フェイゲンのアルバム『The Nightfly』。深夜のDJ然としたジャケットの魅力とともに、最初のLPを買って以来、最も愛聴した作品の一つです。
最初はLPで、ついでCDで何度も繰り返し聴きました。その後2000年代を迎えてDVD-audio(ハイレゾ音源+静止画映像)も手に入れ、もちろんDVD-audioプレイヤーも買いました。ソフトは10枚程度しか買いませんでしたが、アッという間に規格そのものがフェイドアウト。市場から消え去ってしまいました(涙)。
結果無駄な買いものをしたと後悔したものです。
ところが、今月『The Nightfly』のSACD盤(超高音質CD)が出たと聞いて、矢も楯もたまらずアマゾンで購入。ついに同じ内容のアルバムの4種類目をゲットしたことになります。もちろんジャケットも同じで、ライナーノーツも一部が同じです。
ただ、そのSACDの超がつくほど素晴らしい音質に感動しています。
もちろん家族があきれ果てていることは、申し上げるまでもありませんが・・・(冷汗)。