Falling In Love With Loveだなんて、粋な心のツボをつくのが見事ですね、作詞のロレンツ・ハートさん。

この歌詞を聴くと、ボクは少年時代の多感な時期に“恋することにあこがれていた自分自身”の姿を思い出します。

恋する対象がいないのに、恋に憧れる。この時の切なさはいまも忘れることはありません。

逆にいうと、恋に憧れている時期には本当の恋ではないのかもしれません。

1938年のミュージカル『シラキューズから来た男たち』の中のナンバー。作曲は、リチャード・ロジャーズ。彼はロレンツ・ハートの死後、オスカー・ハマースタインⅡ世と組んで40年代にヒット・ミュージカルを連発しますが、同じハート=ロジャーズのコンビの名作「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は忘れられない名曲です。

この曲、なんといってもヘレン・メリル。ダイナ・ショアの名唱もありますが、『ウィズ・クリフォード・ブラウン』A面の4曲目!忘れがたし

最初はジャズクラブでのライヴ映像で。声が、口が開くのよりちょっと遅れ気味に出てくるのがたまりません。萌えます(笑)。




やはりLPヴァージョンが最高ですね。久ぶりにLPを引っ張り出して聴きましたが、編曲・指揮はクインシー・ジョーンズです。

油井正一さんのライナーノーツによれば、録音(1954年12月)の1年前までブラウニーとクインシーは、ライオネル・ハンプトンの楽団で並んでプレイしてきた親友だった縁で、アレンジの役割が回ってきたそうです。

それにヘレン・メリルがエマーシーに移籍するときに最初の録音パートナーにクリフォード・ブラウンを指名したと書いてあります。このアルバムは、主役であるヘレンとブラウニーと同時にクインシーのアレンジャーとしての評価も急上昇したことでしょう。時にクインシー、21歳!

ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウンより「恋に恋して」




このLPに歌詞の対訳が掲載されています(訳:川合とものぶ)

♪恋に恋するということは、見せかけにだまされてしまうことね
それなのに恋に恋するなんて、何てバカげた真似かしら
あまりにも少女趣味的だわ
そんなことを信じるなんて小学校の生徒よね
私が恋に恋してしまったのは満月のある晩
私は物事をよく見もしない愚か者なのね
とりとめのない恋に恋してしまったけれど
本当の永遠の恋はもうとっくにどこかへ行ってしまったわ



ボクが恋に恋する少年だったころに、このヘレン・メリルを聴き、歌詞を理解していたらもう少し勉強に励んでいたかもしれません(笑)。

ちょっと毛色の変わった「恋に恋して」ザ・シュープリームス




最後は数多いジャズ・プレイヤーのなかから、オスカー・ピーターソンで。1977年モントルー・フェスでのライヴ


 

実は、先日壊れてしまったLPのプレイヤーがようやく復旧

よろこび勇んで聴いた数枚のアルバム『ジョアン・ジルベルト/AMOROSO』などのなかの一枚が『ヘレン・メリルとクリフォード・ブラウン』でした。

あたりまえのことですが、正確に回転するプレイヤーに改めて感銘しました。
普段使いなれていても、壊れてしまったら初めてそのありがたみが分かるものですね。

ちょっとしみじみのpopfreakなのでした。