昨年末ことですが、赤坂のニューオータニ美術館にて開催されていた『グラフィック・デザイナー野口久光の世界』という映画のポスター展に行きました。

すでに多くの人がブログで紹介されていますので重複は避けますが、野口久光は日本で公開された洋画のポスターを多く描いて映画の魅力を多くの人に伝えるだけでなく、音楽評論家としてジャズ評論やレコードのライナーノーツに多くの足跡を残しました。

ボクも氏の多くの著作に大いに啓発された一人です。

ところでその展覧会でボクは“この映画”のポスターも野口久光氏の手になるものだったと知って驚きました。

子役ブリジット・フォッセーが世界に衝撃を与えた『禁じられた遊び』です。このポスターを見て、映画を観たくなる人が多かったのではないでしょうか?

$♪blowin' in the music 野口久光・作品の1つ

同時にこの映画の音楽は、ナルシソ・イエペスのギターによる哀愁のメロディとともに世界に多くのアマチュア・ギタリストを生み出しました。冒頭の第一主題(マイナー)は、だれでも演奏できるアルペジオという技法によるものです。

イエペスの日本コンサート(どうやらアンコールでの「禁じられた遊び」のようです)



拍手を制して最初から始めるところが生真面目でいいですね。


しかし、転調後のメジャー・パートからはいきなり難しくなり、ここで行き詰って多くの落後者が出たそうです(笑)。幸いボクはなんとかクリアーしたしたが・・。

こんな映画の一部にこの哀愁のアルペジオが流れるだけで、涙をそそられます。

映画シーンに音楽が入って・・



かつてこの「禁じられた遊び」は、スペイン民謡「愛のロマンス」をイエペスがアレンジしたものというのが定説でした。

その後、1941年の別の映画『血と砂』という映画にヴィセンテ・ゴメスが同じ手法でしていることを知り、ボクも両者(イエペスとゴメス)の演奏をレコードで聴き比べましたが、間奏部分があるかないかの違いだけで、主メロと奏法は同じでした。

それがまた最近になって「禁じられた遊び」は、アントニオ・ルビラーというスペインのギタリスト/音楽家が19世紀末に作曲した「分散和音の練習曲」が原曲
あることが判明しました。

とはいえ、イエペスがこの曲を広めてギターの普及に貢献したことにに水をさすものではありません。

YouTubeのなかには、涙なくしては観られない“映画ラスト10分”をアップしてくれている人もいます。



名画と名曲の組み合わせの代表的な作品ですね。

【おまけ】

フランスのヌーベル・バーグ監督、フランソワ・トリフォーは、27歳のデビュー監督映画『大人は判ってくれない』(1959年)の日本公開用に野口久光が描いたポスターに感激し、後の映画でこの絵を登場させ感謝の意を表したそうです。

$♪blowin' in the music 展覧会のチケットにも使われている

その後、トリュフォーは終生自分の仕事部屋に飾った、と展覧会で買ったブックレットに紹介されています。

世界を超えた文化の香りのするいい話です。