美しい音楽を聴くと、ときに悲しくなることがあります。

ビル・エヴァンスが、兄の娘デビーのために書いた珠玉のナンバー「ワルツ・フォー・デビー」も、そのような曲のひとつでしょう。

屈指のジャズ・ピアニストによる三拍子、ワルツ。ジャズ=4ビートという固定概念を持っているひとには、驚きかもしれません。この曲をビルは1956年の自分の初アルバムにも収録しましたが、ジャズ・ファンには後のこのアルバムで広く愛されるようになりました。
$♪blowin' in the music Waltz For Debby/Bill Evans

スコット・ラファロのベース、ポール・モチアンのドラムスというビル・エヴァンス・トリオのベスト・メンバーによるライブ録音で、1961年6月25日ヴィレッジ・ヴァンガードの演奏です。



このYouTubeのライブのベース奏者は(ボクの記憶に間違いなければ)、スコット・ラファロ。残念なことに、彼はこの録音の直後、交通事故で急逝しました

訃報を聞いたビルは「しばらく演奏したくない」と失意の時期を過ごすことになったそうです。

上記アルバム『ワルツ・フォー・デビー』のスコット・ラファロの演奏を何度も聴き続けると、次第に彼のその気持ちがわかってきます。


Waltz For Debby/Bill EvansTrio w/Scott LaFaro(d.61/7/6交通事故)



閑話休題。

ボクはこの正月を京都で過ごしました。たまたま寺町通りを散策していて、昔何度かいった中古ジャズCDショップ、Hard-Bop(御池上がる)が営業していたので入ってみました。店内で懐かしい歌モノCDを発見。“京都みやげ”に買いました。

それが『モニカ・セッテルンドwithビル・エヴァンス/ワルツ・フォー・デビー』です。1964年スウェーデンにて、俳優でジャズ歌手でもあるモニカとビル・エヴァンス・トリオが録音したものです。

CDは+6曲の別テイク入りで、ビルの弾き語りで「サンタが街にやってくる」が入っています。ビルが笑いながら歌っているのにはビックリ。

それにしてもボクが知る唯一のウタもの「ワルツ・フォー・デビー」は、モニカ・セッテルンド(当時はゼッタールンドとルビが振ってあった記憶あり)のスウェーデン語によるしみじみとしたいいトラックです。

$♪blowin' in the musicWaltz For Debby/Monica Zetterlund with BillEvans

残念ながらリンクのみ。最初はグダグダしゃべってますが、1分半のあたりから歌が始まります。素晴らしいです。

Waltz For Debby/Monica Zetterlund with Bill Evans Trio

ちなみにベースは若き日のエディ・ゴメスです。 ⇒リンク映像です

ボクが初めてイギリスに行ったとき、ロンドンのロニー・スコッツでビル・エヴァンスを聴きました(過去ブログにも紹介)。⇒過去ブログ、キース・ジャレット参照

猫背で、顔をまるで鍵盤にうずめるようにして
黙々と弾いていた姿をいまでも思い出します。突然通りがかって見つけたロニー・スコッツに告知があり、勇んで出かけたことが昨日のようです。

そのビルも亡くなってから今年で満30年になるそうです。

でも名曲「ワルツ・フォー・デビー」は語り、弾き、歌い継がれ・・・・。

日産TEAN-CM(歌:土岐麻子)



CMにも使われてステキでした。これをうたっている土岐麻子さんは、わが国屈指のジャズサックス奏者、土岐英史さんのお嬢さんです。

次は、クロノス・クァルテットによるもの。かつてビル・エヴァンス・トリオのメンバーだったエディ・ゴメス(ベース)とビル・エヴァンスとのデュオ名盤『アンダーカレント』のパートナー、ギターのジム・ホールがサポートしています。

Waltz For Debby/Kronos Quarter with Eddie Gomez & Jim Hall



「ワルツ・フォー・デビー」。悲しくなるほどの名曲です。

$♪blowin' in the music ビル・エヴァンスのスタイルです