♪blowin’ in the music 映画『悲しみよ今日は』


ネットニュース、朝日COMで紹介されたホームレス歌人さんのことはご存知でしょうか。朝日新聞の月曜掲載『朝日歌壇』に投稿して、多くの入選を果たしているホームレス氏のことです。
⇒朝日コムへのリンク
彼が投稿した数々の名歌のなかに、こんな一句がありました。引用させていただきます。

『美しき星座の下眠りゆく
  グレコの唄(うた)を聴くは幻』

氏がホームレスであることを考えると、この句の持つリアリティがひしひし伝わってくるようです。

この「グレコ」とは、50年代~60年代にかけて一世を風靡したシャンソン歌手、ジュリエット・グレコのことを指しているのでしょうから、彼は60年代に青春を過ごされた方だと思われます。

そしてグレコといえば、「悲しみよ今日は」

フランソワーズ・サガンの同名小説をハリウッドの巨匠、オットー・プレミンジャーが映画化したテーマ曲として作られ、グレコ自身が劇中で歌っています


 ⇒リンク


これはジーン・セバーグ。この映画の直後にゴダールの『勝手にしやがれ』で大ブレイクしていますが、『悲しみよ今日は』は日本ではヒットしたもののアメリカでの上映は不発だったそうです。

さすがハリウッドですね。フランス語の歌詞があるのに、原作はフランス文学なのに、グレコに英語(英語詞:アーサー・ローレンス)で歌わせています。これって、ブラジルのジルベルトたちに英語で「イパネマの娘」を歌わせたプロデューサー、クリード・テイラーみたいですね(このネタはまた後日に)。映画も音楽もアメリカがデファクト・スタンダードなんだとの自負ありありです。

残念ながらYouTubeには、フランス語でグレコが歌っている映像をみつけることはできませんでした。

歌詞はこんな内容です。

♪悲しみよ今日は 私に似た友よ
 お前はそこに私が自分の青春をみる 唯一の鏡なのだ

ジュリエット・グレコは、実存主義のジャン・ポール・サルトルやボーボワールなど、フランス知識人たちのアイドル的な存在でした。黒づくめのファッション、一切の装飾品を排除した凛々しい姿に、日本でも多くのファンの心を捉えました。

ところで映画『悲しみよ今日は』のポスター(冒頭のイラスト)は、非常に印象的でした。
このデザインを担当したのは、ソウル・バス。オットー・プレミンジャーとのコンビで多くの“メイン・ヴィジュアル”を作りました。

もっとも印象深い作品の一つ『黄金の腕』のメイン・ヴィジュアルもソウル・バスによるものです。

ところでホームレス歌人さんの話は、まずは朝日ネットニュースが先行して、肝心の朝日新聞には翌日の朝刊で掲載されています(しかもグレコの句は載っていない!)。毎月3950円もお金を払って新聞をとっている人たちのことをどう思ってるんでしょうね!