デビュー・アルバム"Come Away With Me"が発売になった翌年、ノラ・ジョーンズは、グラミー賞の主要4部門を含む8冠を受賞しました。


この受賞には、アメリカのルーツ・ミュージックたるカントリー部門で1950年ごろ世界中で人気を博したシンガー(シンガー・ソングライターですが、当時はそういう言い方はしませんでした)、ハンク・ウィリアムズの名曲「コール・コールド・ハート」をカバーしたことが評価されたのではないか、と私は考えています。
グラミー賞の選考委員が抱いている“ルーツ・ミュージック志向”をくすぐったのではないか、と。

Norah Jones -Cold Cold Heart


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ノラ・ジョーンズの素晴らしい歌唱です。

一般的には、カントリーの歌唱法とジャズの歌唱法とは共存しないものです。カントリーはイン・テンポで歌うのが身上で、ジャズは本来演奏家自身の個人的表現力を最大限に発揮するものだと考えられているからです。

(極端にいうと、カントリーは“鼻歌”でジャズ・ヴォーカルは“魂の歌”だと。ちょっとオーバーな解釈かもしれませんが、ノラ・ジョーンズはビリー・ホリデイを聴いて育っていますから、両方の手法が共存する貴重な存在かもしれません)

ですから、カントリー歌手で他の部門のアーティストと積極的に活動を共にするのは、ウィリー・ネルソンくらいではないでしょうか?(余談ですが、最近でたジャズ・トランペッターのウィントン・マルサリスとのライブ・アルバムは素敵です)

かのボブ・ディランも、初期はフォークのカバー曲が多かったので、しばらくしてロックをやったら「帰れ!」コールとブーイングの嵐だったことも思い出します。音楽の他部門交流はなにかと非難されることが多かったのでしょうか。

そういう意味では、ノラ・ジョーンズは、それらの過去すべてを丸く収めたのですから、功績は大だと思います。

端正なハンク・ウィリアムズの写真です。



そのハンク自身が「コールド・コールド・ハート」を歌っている映像がYouTubeにありました↓。

Hank Williams Cold Cold Heart


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ハンク・ウィリアムズは、ツアーの連続のなかでアル中に苦しみます。そして1953年1月1日、移動中の車のなかで亡くなりました。まだ29歳でした。
「カウライジャ」「ユー・チーティン・ハート」「ヘイ・グッド・ルッキン」「泣きたいほどの淋しさだ」など、誰もが歌える名曲を残しました。

*次回は、ハンク・ウィリアムズの代表曲「ジャンパラヤ」をカバーしたカーペンターズに続きます。