2002年の春、私は電車の乗り換えの時間つぶしにはいったCDショップで1枚のCDを“ジャケ買い”しました。チャーミングなジャケットでした。


ご参考までに説明しますと、“ジャケ買い”とは内容やアーティストについての予備知識がないにもかかわらず、単にジャケットが気に入っただけの理由で買ってしまう衝動買いを指します。

その多くはステキな女性をフューチャーしたジャケットにそそられる、ある種“不純な動機”です(笑)。

私はLP時代からジャケ買い癖が抜けきれず、いままでにも幾多の駄作をつかまされ(もちろん買った私に責任があることは百も承知しています)、失敗した例は数知れず。

ただその時のジャケ買いだけは、大正解でした。そのアーティストがまだ誰なのか、また何者なのかも知らない時期だったことだけは確かです。
Norah Jones Don't know why

(⇒リンク)

それがノラ・ジョーンズのファースト・アルバム、1曲目のこの「Don't know why」にグィとハートをわしづかみにされました。

彼女の成功のカギはいくつもあります。

1.カントリー・ミュージックをルーツにもっている音楽であること。

2.学生時代にジャズを学んだことで、ブルージーな歌唱が身についていること。その原点は、ジャズ好きな母親の膨大なレコード・コレクションにあるといわれています。
とりわけビリー・ホリディがノラのお気に入りだったとか。

3.レーベルが「ブルーノート」。時代が違うとはいえ、ジャズの名門レーベルであること。ジャズもまたアメリカのルーツ・ミュージックであること。

4.父親がインドの音楽家であること。シタール奏者のラヴィ・シャンカールであることは、後になって公表されましたが、私がジャケ写に惹かれたのは、その“エキゾチズム”に魅力を感じたからでしょう。

父娘二人を比べるとやはり似ています。



 父


ただノラが生まれたときにすでに離婚していたそうですから、彼女のDNAの中に内省的なインド音楽のルーツが在ったのかもしれません(とは、ややこじつけです)。

5.すばらしいプロデューサーにめぐり合ったこと。アリフ・マーディンアメリカ音楽界の巨星です。多くのアーティストをプロデュースしていますが、中ではベット・ミドラーが代表格でしょうか。アレサやチャカ・カーンなどもプロデュースしました(アリフ・マーディンは2006年に亡くなりました<合掌>)。

6.すばらしい音楽仲間、ジェシィ・ハリスの曲「Don't Know Why」をアルバムの1曲目にいれたこと。
私は、この曲のあまりのすばらしさに、ジェシィ・ハリスのアルバムまで買ってしまいました。もちろんジャケ買いではありません。

ジェシィはこんな感じの、カントリー風味のシンガー・ソングライターです。味のある映像がYouTubeにありました↓。
Jesse Harris - How Could It Takes So Long?


(⇒リンク)

*ところで、ノラ・ジョーンズが自身のカントリー風味を明確に示したのは、1950年頃にカントリー・ミュージックを世界中に広めたハンク・ウィリアムズの曲をカバーしていたからだと思います。次回は、ノラとハンクです。