久しぶりに崖っぷちの道を自家用ジェットで走る



白のライフを「自家用ジェット」とわたしは呼んでいる。



渓谷に沿った狭い道



急なカーブが何度も続く



目が回りそうになる



時々、対向車がくる



緊張の瞬間



ギリギリなのでゆっくりとすれ違う



お互いに頭を下げて挨拶する



みんな知っている人



この先には母の実家がある



景色の良いところで車を停める



崖にゆっくり近づいて下を見てみる



ずっと下で川が龍のように暴れている



紅葉の終わった茶色い楓や楢の葉があちこちにへばり付いている



100メートルぐらいはあるのか?



小さい石を落としてみる



いつまでも転がっている



ここで自ら命を絶った人が何人もいる



わたしはいつも思う



ここから落ちる勇気があるんだったら…



なんでも出来るんじゃないのか…



死ぬ気でやれば??



なんでも出来る



また元気が出てきた。



自家用ジェットに乗り込む



ゆっくりと走り出す



母の実家には囲炉裏がある



今日は何を作っているんだろう



だいこん汁か、粕汁か…



楽しみだ。





晴れた日は川に沿って歩く。



最初は大きい川に沿って。



この辺りにはコイやフナが住んでいる。



ウグイもいればナマズもいる。



小さい魚はアブラッペ。



雨が降れば、ギギも現れる。



20分ぐらい歩くと支流が見えてくる。



とても小さい川。



そして小さな沢。



合流してる辺りにはオイカワやニゴイが多い。



ときどきアユもいたりする。



小さな沢に沿って歩く。



道は狭い。



犬と並んで歩けない。



少し歩くと小屋がふたつある。



小さい頃はよくここで遊んだ。



かくれんぼ。王様つぶし。



だるまさんがころんだ。



ままごと。



お医者さんごっこ。



小さな無花果の実が淋しそうになっている。



この沢は奥が深い。



この先にはヤマメが住んでいる。



ウグイやアブラッペはこの先には住めない。



小さな滝が何度も続く。



その先でいきなり沢が消える。



わたしは知っている。



このまま30分も歩けばまた沢が現れる。



小さい頃はよく探検した。



そこにはイワナが沢山住んでいる。



他の魚はそこまで行けない。



滝の落差と水の冷たさのせいで。




また来年、春になったらイワナを食べる。



暖かい日でも川の近くにいると、



だんだん冷えてくる。



このコースは今年はもうこないだろう。



形の良い貝の化石をひとつだけ拾って、



走るように帰る。

雨の日の散歩。



桑畑の中を傘をさして歩く。



犬はびしょ濡れ。



昔、この辺りは養蚕が盛んだった。



あの気持ち悪い白い幼虫を蚕様(かいこさま)なんて呼んでいた。



沼のほとりの大きい桑の木にアケビの蔓がからまっていた。



久しぶりに木に登った。



20年ぶりぐらいか…



まだ口の開いていないアケビを片っ端からもぎ取って落とす。



それを娘が下で受け取る。



3回に一度ぐらいは落としてしまう。


「ママ、パンツ見えてるよ!」



見えたってかまわない。減るもんじゃない。



「おい!大丈夫か?危ないぞ!」



通りがかりのオヤジが叫んでいる。



どうせスカートの中を覗いているのだろう。



開いて完全に熟したアケビをオヤジを狙ってさり気なく落とす。



ズボンの脛のあたりに命中!



「あっ!すいませ~ん」



こんないい女のパンツを見られるなんて…



あんたは幸せだ。



帰る頃には風も雨も強くなっていた。



川も水量が増えてきている。



なんだか怖くなってきた。



沢山のアケビを抱えて走って帰った。







久しぶりに子供と午後の散歩に行った。



いつもと違うコース。



裏道の裏道。



裏道は舗装道路で、裏道の裏道は砂利道。



10分ほど歩くと、2本の大きな栗の木がある。



予想通り沢山の栗とイガが落ちていた。




  「ママ、栗がいっぱい落ちているよ!」




  「拾ってはダメ!!」




小さい頃から知っている。



ここの栗は拾ってはいけない。



拾うと栗泥棒となってしまう。



誰かが見ている。



もう少し歩けば、大きな銀杏の木がある。



銀杏の実が落ちるのは、もう少し寒くなってから。



銀杏の木を過ぎれば杉林。



杉林の真ん中あたりで左に曲がって、



田んぼのあぜ道を通って家に帰る。




とても静かな午後。


小さなメロディー





最近、わたしは病気だ。

文字を書く病気。

ひと文字ひと文字ゆっくりと書く。




   月日は百代の過客にして…



ひたすら書き続ける。

書いてると気持ちがスッキリしてくる。

字が上手になったような気がしてくる。




   草の戸も 住替わる代ぞひなの家



書いていて疲れると上を見上げる。

掃除をしようか、洗濯しようか…

もう少し。まだ大丈夫。

ひと文字ひと文字丁寧に書く。

芭蕉のことばを書き写す。

曾良と一緒に旅をする。




   夏草や 兵どもが夢の跡




書いて書いて

疲れて

書いて。

天気が良いから散歩に行こうか…。

なんだか面倒だ。

やっぱり旅をしよう。

書いて書いて…