乗り込んできた4人の女子たちが「こんにちは!」と口々にきれいな日本語で挨拶してきた。「お!すごい、こんにちは」と返すとなにかささやいてつつきあっている。ここはどうしたものかM君と困ってしまってとりあえず写真なぞとってみる。

すぐに車が止まり、倉庫のような建物の中へ荷物を運び込んだ。そこはやけに天井が高い広めの教室で、中では30人くらいの生徒たちが花の飾りつけの勉強をしていた。生徒は女子ばかり。一人の男の先生が教えている。車が到着してからずっと何人もの生徒が教室のドアに隠れるようにしてこちらを見ていた。

最初に乗り込んできた女子たちと師匠に先導されるまま教室に入り、生徒に囲まれ挨拶をする。先生は一人かと思っていたら、女子にまぎれておばさん先生がいたようだ。「はじめまして、私は○○先生です」と日本語できた。この学校では日本語を勉強するらしい。こちらも日本語で自己紹介する。生徒たちがみんなで「はじめまして」と挨拶。それ以上はテキストを置いてきてしまったのでしゃべれないらしい。
男の先生はといえば、女子の間に埋もれてじゃれあっている。。え?もしかして先生じゃなくて生徒か!?あんたふけすぎやで。とっつぁん坊や!一人だけ男子で、日本語を習い始めて2時間目らしい。

自己紹介が終わったところでフラワーアレンジメントを見せてもらった。一人の女子が花をきれいに盛り付けた籠を手にもち、首を傾けちょこんとひざを折って挨拶する。そのしぐさがやけに新鮮でドキッとしてしまう。やばいやばい。

お披露目が終わったところで、教室の片隅に移動しタイガーバーム作りのセッティング。炊飯器のようなものをテーブルに置き、中に水を入れスイッチを入れた。そこへ2人の先生が入ってきた。20代前半くらいの若い女の先生は日本語の先生。べっぴんさんである。もう一人は年の割りにやけに派手なスカートのおばさん先生。どうやら校長らしい。顔が岡本太郎に似ている。お花教室が続く中、とりあえず間借りする形で僕らだけのタイガーバーム教室が始まった。


タイガーバームは成分の分量やいろいろな香り付けのオイルを混ぜて一人一人オリジナルのバームをつくることができるらしい。つまりラー師匠が作ればそれは師匠特製のラーバームになるのだ。M君が作ればM君バーム。


お花教室が終わり、生徒が周りにぐわっと集まりだした。僕らだけ師匠のまん前にいすを置き座っている。特等席だ。申し訳ない。
一人の女子がKさんへとこっそりノートブックが渡した。どうやら住所を書いてくれとのことらしい。回ってきたのでM君と僕も英語と日本語で書いておく。あとで手紙でも送ってくれるのだろうか。楽しみだ。

バームとは別のビーカーにビーワックスと樟脳だったかを1対1くらいで混ぜ合わせてこね回す。師匠の言葉を日本語のべっぴん先生が訳して「自分で水になります」と言う。??と思ってみていると化学反応でしだいに溶け合って、自分で水になった。なるほど。べっぴん先生はかなり日本語がうまい。

そうこうするうちに出来上がった。ベーシックなタイガーバームと、パインオイルを入れたインディアン風のラーバーム。それぞれを小さな容器に詰めてお土産にもらった。

師匠が「次はタイ語で説明するから、頑張って聞き取って」と僕たちにいってから、生徒たちに向けてターガーバーム教室タイ語版がはじまった。材料の単語はところどころわかるけど、あとは分からん。とりあえず材料の説明とその値段を言っているようだ。「このワセリンはどこそこで売っていて1Lで○バーツ」材料一つ一つ、必ず値段を言う。この辺はさすがタイ。相手が値段を知らないと踏むとタイ人同士でも平気でふっかけてくるらしいので、物の適切な値段を知るということは重要な勉強なのだろう。

全部の説明が終わったところで師匠はいろいろなオイルを前に並べて、適当に調合してオリジナルバームを作れということらしい。パイン(松)、シナモン、アップル、レモングラス、ユーカリ、ペパーミント、ブラックペッパー。

ブラックペッパーはたしかにそのにおいがする。どれを入れようかごちょごちょやっているうちに終わりの時間のようで師匠が片付け始め、ずるずると終了である。生徒たちもぱらぱらと帰っていく。結局オリジナルバームは作れなかった。その横で、窓の外にいた背の高い女子から「名前はなんですか?」と聞かれまた自己紹介。その子が白いバラのような花を一輪、窓越しに渡してくれた。僕が「ありがとう」を言うか言わぬ間に走ってどこかへ行ってしまった。
あいや、まいったー。これは嬉しい。あとでM君と女弟子Kさんにからかわれながら顔がにやけてしまった。

M君はべっぴん先生と話をしていた。先生は昨日ターペー門の市場に来ていたそうだ。この学校とはかなり離れているように思ったが、このくらいの距離は全然近いらしい。日本人の友達がいるらしく、ゆっくりだが発音がきれいだ。


片づけが終わって、みんなで記念撮影。帰りの時間だ。さよならを言い車に乗り込む。
ちょうど下校時間のようで、たくさんの生徒が歩いている中を師匠のソンテウで抜けていく。かなりゆっくり行くので、丸開きのうしろや横から視線を集めまくりだ。
校門を出たところで最初に乗り込んできた女子たちが手を振って見送ってくれた。

思いがけず楽しい体験をしてしまった。NHKのドキュメンタリーみたいだ、とM君と言い合いながらマッサージ教室に帰っていく。


道場に着くと終了時間をすぎていた。ラー師匠は、「レッスンの心配はしなくていいから。またいつでも来て解らないことがあれば聞いて。練習もさせてあげる。」といってくれた。師匠ありがとう、今日はとても楽しかった!
他の師匠たちも交えて写真をとった。


明日から2泊3日でゴールデントライアングルとミャンマーに行く。