監督:小林正樹
主演:仲代達矢
岩下志麻
三國連太郎
丹波哲郎
感想:1962年9月16日公開作品だそうです。映画を観終わった後、シェイクスピアの悲劇作品を読み終えたような感じがしました。似た作品はない(と思う)のですが、後味が何となく思い起こされるように感じました。
小林正樹監督作品を調べたら、「上位討ち」という作品があり、原作が、池波正太郎さんと知り、(すでに読んでいるかもしれないですが)読んでみたいと思いました。私は時代劇は好きなようですが、時代物は、ほとんど池波正太郎さんしか読んできてないように思います。それは理由はわからないです。
この映画「切腹」は、父と母と一緒に観ました。私は、ヴェンダース監督や、アッバス・キアロスタミ監督など、又はロードムービーのようなものが好きなのですが、父親はつまらない映画と言うので、そういうものは、一緒に観ることは余りありません。時代劇は好きなようなのですが、「切腹」を流し始めた時には、私はまた『つまらない』と言うかなと少し思いました。しかし、母親が、あれ丹波哲郎じゃない?三國連太郎さんだったかもしれませんが、俳優さんがわかったようで、それに父親も反応して、話に引き込まれたようでした。また、そこで私も、あれ?本当だ、若い時の丹波哲郎さんや三國連太郎さんが出演しているとその時分かりました。私が借りてきたのですが、私はジャケットの「写真」と、「あらすじ」だけを見て借りてきていました。父親は50年くらい昔の何じゃないかと言ってましたが、調べたら60年くらい昔のものでした。
三國連太郎さんは、「釣りバカ」の三國連太郎さんとは違っていて、若い頃は面長の姿でした。仲代達矢さんの娘役で、岩下志麻さんが出演していました。それは観終わった後から知りました。若い頃は、可愛いと美人さんの中間のような容姿でした。芳根京子さんに似ているように思えました。
あらすじ(始まり):切腹のため、(武家)屋敷の庭先を貸して頂きたいと懇願し、困った屋敷主が、これで引き取って下さいと幾ばくかの金子(きんす)を渡して追い返す、といった、そういった(上手くやった)人達がいた、という話が広く聞きかれていたようです。浪人もおそらくそういう話を聞いて、自分も上手くやろうとしたようでした。しかし、そう上手くいくどころか切腹をさせられる流れに、どうしても逃れられない流れへとのみ込まれてしまうのです。その悲劇に至る、それに絡まるもうひとつの、その続きでもある物語。
私はその浪人を、最初見ていた時に、ああ、しょうがないな、全く、自業自得ということあるよなというような目で見ていました・・・・
この映画を観終わった後、私は、エミール・クストリッツァ監督の「ライフ・イズ・ミラクル」を思い出しました。冒頭に出てきた何気ないロバが、映画を見終わる時には、そのロバにいとおしい気持ちを持っていました。
「切腹」の冒頭に出てきて、自業自得だとある種見下して見ていた浪人は、後半には、あなたわかるよ、と、そうせざるえなかったんだと見上げるような気持ちにさせられました。
そして、映画としては、主役の仲代達矢さんの最期の大立ち回りに少しスッキリさせられ、(悲劇ですが、)終わりよければ、という気持ちになりました。
とてもよくできた映画で、心に爪痕を残されました。
また、少し前に観た「必剣 鳥刺し」(監督:平山秀幸 出演:豊川悦司) も似たような感じがあります。
モノクロの昔の映画ですが、今の時代にはもう醸し出せないのだろうと思わせる張りつめた空気感がありました。
困窮して、さて、後も先ももうない、となった時に、あの浪人のようにするのだろうか、と少し考えもしますが、どうにもならな過ぎて、思考停止です。後になり、竹光だったのかと、浪人を見上げることしか出来ません。
モノクロだったせいかもしれませんが、シェイクスピアを感じた映画でした。映画を見ていた間に、俳優さんの豪華さにも驚きました。出演者を見ないで借りてきていたんだと不思議な気持ちになりました。三國連太郎さんと丹波哲郎さん悪い役でした。この映画を観てから、昔の時代劇映画に興味が湧きました。