昨日、後輩との食事を終え、家路につこうとしていた私はふと携帯電話を取り出した。
着信だ。
大学時代、はじめてのバイトで何故か気に入ってもらってから、不思議な縁でもう4年ほどの付き合いになりますか。仲良しの先輩からだった。
着信があって5分しか経ってないからすぐにかけ直したのに、なぜかもう一往復してつながった。
ドSの皮をかぶった小心者で、無駄に繊細なところがある先輩。わざわざかけ直してくれたのかもしれない。
「Hey、What's up!?」
いつものか細く情けない声が空しく人ごみに消える。
「Yeah!?」
人ごみだっつの。思わず私も同じノリで返してしまう。
しばしのsmall talkの後、気を取り直して本題に入る。
「で、どうしたんですか?」
先輩は仕事柄、火曜と水曜が休みの日。
街が浮かれる金曜日の夜だからといって、おいそれと夜更かししている場合ではない。
私が大学生の頃は暇さえあれば平日でも遅くまでメッセンジャーで話しかけてくるような寂しがり屋な先輩だが、電話は珍しい。何かあったのかな?
そういえば去年、彼氏氏が働き始めてからは彼との時間を優先してしまって、先輩とも遊んであげることが少なくなったな・・・。
まんまと彼氏氏の休みの日も火曜日だったりして、何度か誘いを断ったこともある。
たまに先輩のよく聞くと理不尽なロジック攻撃で親友(ドM)をいじめるのに加担したくなって、先輩と親友と私の3人で食事に行くけれど(そしてその後カラオケで親友に萌え系アニソンを歌わす)、今日はどうやらドライブの誘いでもなさそうだ。
「あの・・・」先輩はいつになくモジモジしている。変なの。
いつもニヤニヤしながらハッタリまみれで論破してくる先輩がモゴモゴしてるのが可笑しくて、私はいつもよりおどけて返事してみたりする。
一瞬、嫌な予感がした。
答えを聴いちゃいけない。そんな予感。
私は、まるで恋人に別れを切り出されそうになっているゴボウ男みたいにソワソワし始めた。
ゴボウ男か・・それは君の親友のことだね。先輩、そう言ってください!そしていつもみたいにニヤニヤしましょう!!
ついに先輩の口からでた、止めの一撃。
「昨日・・・会社から人事異動が発表されてね・・・・・・」
きた。
私を奈落の底に落とす一撃。
駅前の浮ついた人ごみ。家路を急ぐタクシー。バスは最終に近くなっていて、花金も終わりに近づいていることを告げる。
私はその一撃で、すべてを察知した。
「会社の若返りの一環でね、本社の古い体質を変える若い人材が必要だ!じゃあどこにいる?ここにいるじゃないか!お前行ってこい的な、そんな感じで辞令が出たよ、あは」
もちろん一生会えないわけじゃない。
盆正月ぐらいは帰ってくる。
異動自体も3年から5年くらいだから、って先輩。違うんです。
私は先輩と、親友と、今からどう?でせーので集まれる今の状況が愛しかったんです。
「今日も君の親友を思う存分辱めましょう」の合図で電話して、親友を10分で来させる人使いの荒さを楽しみたかったんです。
わざわざ会いに行って、かしこまって歓迎されることなんて望んでないんです。
てかそこまでしたくないしwwww
近くにいることが当たり前になりすぎて、遠くへ行くことがイメージできず、ただただショックを受けることしかできない私。
電話越しの先輩の声も、心なしか寂しそう。
引っ越し準備も一月しかないとのこと。
4月までの一か月、いろんな場所での送別会など、先輩も忙しい日々を送るようです。
最後にもう一度3人で遊びに行きたいなぁ。
・・・・・・それも何か違うんだけど。
「最後に」なんて改まったら、何か変な感じになりそうだ。
無くして初めてわかる、気の置けない仲間の存在。大切さ。
というか、知り合った頃から私の大事な理解者だったなぁ。。。
寂しくなるなぁ。。。。
数分前にソワソワしていた崖っぷちのゴボウ男(=私)は、引導を渡された後はひたすら、嫌だ嫌だと駄々をこねていた。
意外と私って未練がましいのかも・・・彼氏氏は別れ話を切り出す際には注意していただきます様お願い申し上げます(笑)