いらっしゃいませ 本日ご用意いたしましたのはこちらでございます。

 

・・人間には誰しも、一種抜きがたい保守性というものがあるようだ。保守性が

 

すなわち道徳であるのかもしれない。みだりに家庭を破壊する夫は不道徳だと言

 

われるに違いない。普通の夫は容易なことでは家庭を壊そうとは思わない。

 

しかし本当を言えば、壊してならない理由などないのだ。それはむしろ感情的な

 

こだわりに過ぎない。感情が保守的であるのだ。家庭というところは保守性の

 

大本山みたいなところだ。一人の男と一人の女とが、一万回も二万回も鼻を突き

 

合わせ食事をするなどということは、常識では考えられない。まるで気狂いだ。

 

そういう気狂い的行動を平然として繰り返している場所が、すなわち家庭という

 

ものであるのだ。

 

                    石川達三「四十八歳の抵抗」より

 

 今夜は ベガ・シシリア・ウニコ1991  ユニークなスペインの赤ワインでご

ざいます。 男とは、あがいてあがいて、抵抗という夢を胸に灯して、生きている

のでしょうね。 ご一緒にどうぞ