子供から大人になる間に、誰もがいろいろなことを体験し、いろいろなことを知り、少しずつ自分の人格を作ってきたのだと思います。
経験が違えば価値観やものの考え方も変わって行きます。
体験の中には、「陽」体験もあれば「負」の体験もあります。
嬉しい楽しいことは繰り返したいと思うし、悲しい悔しいことは繰り返すまいと思う。
子供の頃の家族との生活を通して、たくさんのことを学び、
一人社会へ出て暮らしてきました。
姉は実家の家業を継ぎ、ずっと家族と一緒に暮らしてきました。
姉も、私もそれぞれ幸せに暮らす家庭を築くことができましたが、
それぞれの環境の中で、また異なる経験をしていますから、
姉妹でも「強く共感できること」と「お互いに発見すること」が生まれてきます。
この二人の時間が変えて行った、二人の価値観の差異。
たった二人の姉妹。お互いに足し算をしあって異なる価値観をうまく相乗できないこと。
このことが私の心やダーくんの心を悩ませています。
ダーくんが帰ってしまった訳・・・・。
何十年という月日が産んだ長く重い課題です。
人の価値観は生活習慣や人間関係をも変えていきます。
先週末。父の病状について主治医から説明がありました。
「これまでは改善のために治療してきたが、これからは現状の維持に専念せざるを得ない。」
心配停止を起こし蘇生されてからもうすぐ3ヶ月。
ずっと意識のないまま、残る体力で頑張ってくれてきた父も、手術後の合併症での高熱を戦った日々、その後訪れた思いもしなかった心配停止などで、痛めつけられっぱなしの内臓。
薬を使えば肝臓、腎臓が痛む。薬を減らせば血圧が下がる。
そんな綱渡りの中で親父は頑張ってくれています。
主治医の説明のあった夜。麗子さんがポツリと言いました。
「ねえ。○○くん(ダーくんのこと)どうして帰っちゃったの?」
このひと言から、私の苦悩は始まりました。
以前そう聞かれた時には冗談で切り返しましたが、
重い心を抱えた夜に搾り出すような麗子さんの言葉に、
もうおちゃらけて返事できる状態ではありません。
何と応えたら良いのか。
考えても答えが出ない。
そして・・・。繰り返す麗子さん。
鋭い麗子さんはわかっているんだ・・・。
気が付いていて聞いているんだ・・・。
触れられたくない問題でした。
家族が一つになっていることが一番大事なときだから。
私とダーくんの胸の中にだけにこっそり隠していることが、みんなで一緒でいられることなんだ。
頭の中でぐるぐるとそんな思いが回るばかりの私の沈黙を姉が破りました。
「どうせ、うちが嫌なんでしょう?」
「でもねえ!そんな風に嫌がるのはあんたたちだけなんだよ!」
真っ赤な鬼のような顔に歯軋りをしながら怒鳴る姉。
そうなんです。このやり取り。これが原因なんです。
ダーくんは実家での生活に耐えられなくなって、
このままでは実家の家族を嫌いになる。と思い帰ってしまいました。
毎日の何度も繰り返す、夫婦や親子の怒鳴り合い。
麗子さんのいないところでの孫の失礼な発言。
不潔な台所。壊れっぱなしのお風呂。
部屋いっぱいの脱ぎ捨てられた大量の衣服・読み止しの漫画・飲み物の空瓶。
100坪を超える広い邸宅とは思えない足の踏み場もない空間。
荒れた生活・・・・・。
夕食作りを買って出て、ダーくんと二人料理をしながらキッチンを整える。
それを見た言葉は
「全くあんたはいやみな人だねえ。」
中でも特にダーくんが嫌がったのは・・・・。
親父の病院へは車。郊外にある大規模な大学病院、広大な駐車場。
姉の家族は緊急用の駐車場に車を止めること。
ここに車を置いたら、救急車の進入の邪魔になる。
親父が一秒を競う心肺停止を起こし苦しんでいるのに何でそんなことができるんだ。
長い長い時間が、心と生活の違いを作りました。
親父の会社を継ぎながら、経営は不振の一途。
築いたものが壊れていく。
社長の兄はパチンコ。
健康保険証。姪に預けていた私の家の鍵。預金通帳。
しばらくいる間にいろいろな物を失くしてしまう。
特に二人で築いた「我が家」の鍵。
東京に勤めていた長女が通勤が辛く体調を壊してしまうからと、
私の家を使わせてくれと言うので、二人とも迷いもせず鍵を渡した。
でも程なくその仕事は辞め、次の仕事も辞め、
今は麗子さんにお小遣いをもらってスキー三昧の彼女。
几帳面で律儀なダーくんは
鍵が悪用されてマンションの住人の皆さまにご迷惑をかけてしまいはしないか。
そんな最悪のことも考えてしまう。
どうしたら良いの?
麗子さんはここでしか生きられない。
孫の成長を何よりも楽しみにしているのだから。
私の心に離れない憂鬱。
長い間に出来た壁。
これから作っていかなくてはならない家族の幸せってなんなんだろう。
これは序章なんです。
果てしなく続いている姉妹の難しい関係。
大事なルーツ。どうしたら愛し合って育みあっていけるんだろう。
少しずつ私の歴史を記事にしてみることにします。
抜け出さなくちゃならない現実なんですから。
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今日の一枚
ダーくんのメールに添えられていた写真。
メッセージには・・・。
「この1枚、あまりに綺麗だったんで普通撮らない?"エンパイアステートビル"
雲と一緒でコントラストすごいでしょ」