前回のこおろぎ橋と並ぶ山中温泉の奇橋、あやとりはしです。
ひらがなが正式な表記らしいのでそれに従います。
あやとりはしは細い路地の先にあってちょっとわかりにくいが、橋のたもとに無料の駐車場があるのがうれしい。
駐車場のある西詰から。親柱の類はなく、写真のように自然石に刻んだ「あやとりはし」の橋名のみ。
肝心なところが木で隠れているが、すでに不穏な雰囲気は出ている。
ちょっと横へずれると…
なんじゃこりゃあ!な、トラスのお化けみたいな姿が現れる。
事前にこういう橋であることは知って来ているのだが、実際見るとテンション上がる。
まず三弦トラス、それも三角形が下向きになった逆三弦トラスというのがカッコいい。
さらに歩道部分を吊り下げて浮いたように見せている。
中路式ということになるだろうか、これまたワクワクする。
歩道が浮いているのが分かるだろうか。
ここまででも十分スゴイんだが、渡るとなるとさらに大変で思いっきりカーブしてる。
しかも左右に曲がる。
さらに両岸で5mの高低差があるので縦方向にも曲がっている。
東岸に渡って橋の下へもぐると下弦材がブツッと切れて…
最後はなんと石を積んだ橋脚(?)となっている。
下から見るとまたサイコーで、橋のうねりがよくわかる。
知らずに写真を見ると画像補正をミスったかのようだ。
みょーん。
ぐにゃあ。
帰りも行きとまた違った表情があって楽しい。
…と大変面白く、技術的にも難しそうなこの橋をデザインしたのは橋梁や建築の専門家ではなく、勅使河原宏(てしがはら ひろし)という芸術家でいけばな草月流の三代目家元でもあった人だという。
デザインのコンセプトは活花の家元らしく「鶴仙渓を活ける」だそうで、ありきたりの橋にちょこっと装飾を付け足して終わりではなく構造から攻めてるところが素晴らしい。
両岸を手に見立てての「あやとり」というのが橋名の由来。
活花の先生というと、こおろぎ橋みたいなもっとオーガニックなものを提案してきそうだが、経歴を見ると枠にとらわれない人だったようなので、むしろこれが「らしい」のだろう。
弟子に假屋崎省吾がいるというのを見て妙に納得してしまった。
建設年は1991年7月。こっちの銘板は「あやとり橋」と漢字になっている。
橋の色も勅使河原氏が選んだそうで、単に赤が退色しているのではない。いや退色はしてるかもしらんけど。
ここまででも山中温泉は十分(橋好き的に)すばらしいが、下流にもまだいい橋がある。
ということで次回へつづく。