犬殺 (安城市城ケ入町) | 手当次第

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気になる所にいってみる

いきなり物騒なタイトルですが読みはそのまんま、「いぬころし」という地名です。
清須城信長…それは鬼ころし(東海ローカル?)。
 

2020/11/15 追記
Google mapの仕様が変わったのか、地図上から犬殺の字が無くなっています。
他の地図では欠間の北に犬殺の字名が確認できます。
 
 
地図上で見ると現在の住所としての犬殺は、南北を2本の道路に挟まれた細長い区画で、人家はなく畑になっています。
 
南側の道路から北向きに撮影。ザ・畑。
イメージ 1
 
反対に北側の道から南向きの写真。
イメージ 2
 
ということで名前とは裏腹に明るいのどかな場所となっています。
 
そんな中、気になるのが畑の片隅にポツンと立つ宝篋印塔。
イメージ 3
 
地図上では犬殺からわずかに外れているものの、一基だけ立っているのはいかにもいわくありげ。
しかし情報はなく、おそらく地名とも関係ないと思われます。
 
また犬殺の北側にはお墓がありますが、これもたまたまかな?
イメージ 4
 
『安城の地名』という本によると、以前はもう一か所、同市桜井町城阿原と下谷にまたがって犬殺の地名が存在したとのこと。
検索してみると他にも愛知県一宮市千秋町浅野羽根と、新潟県南蒲原郡田上町吉田新田にも同じ地名があったようです。
 
追記
額田郡幸田町須美を扱った『須美郷土誌』によると、現在の不馬入(まいらず、これはこれで面白い地名だ)の中にも、地元で犬殺しと呼ばれていた場所があったとのこと。
 
犬殺という変わった地名がここだけなら、なにか過去にこの場所で起きた事件や伝説にちなむとも考えられますが、離れた場所に複数存在するということは共通する特徴から名づけられた可能性が高いです。
 
由来について上記の本では「『いぬ』とは低地、狭い、小さいという意味がある。この地ではそのいずれか不明。」と説明しています。
他の地名の本にも「いぬ」は低地を指すというような記述がありました。
 
実際写真ではわかりにくいですが、この場所は周りに比べてほんの少し低くなっており、桜井町の方にもそれらしい低地があります。
 
他二か所の地形はわかりませんが、そこにも同じように低くなっている所がある(あった)のかもしれません。
まぁそれでも「ころし」はナゾのままですが。
 
あるいはかつて犬食の習慣があった頃は食用のため、近代に入っては狂犬病予防を目的に犬を捕まえる人を指して批判的に「犬殺し」と呼んでいたそうですが(Wikipedia)、そちらとの関連はあるのでしょうか。
 
 
この地名はやはり印象が悪いのか、ここ以外はいずれも住所としては消滅しているようで、ひょっとしたら城ケ入町の犬殺は日本で唯一残ったものかもしれません。
逆に言えば、ここに挙げた以外にも昔は各地に犬殺の地名があった可能性もありますが、ちょっとそこまでは調べられませんでした。
 
 
 
「犬が私の手をなめるさまを見てごらんなさい、それにその子犬たちときたら、ねえ、プリムス、これ以上美しいものなんてきっとないわ!」
(『ロボット(R.U.R)』 チャペック 千野栄一訳)