レター -22ページ目
<< 前のページへ最新 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22

とびら

061105_1707~01.jpg
仕事場の裏口を開けると、

懐かしい風。



呼吸の楽になる場所。



扉一枚で、
騒音から逃れる。



ミルクティを片手に、

自分に返る。


ため息は

もう白い。

手紙


あたしの書いた手紙を、

あなたはまだ持っているのか。


最後まで言えなかった、
便箋数枚の、それ。



うすっぺらかっただろうけれど、

少し、
重たかったでしょう。



あなたからの言葉は、
いつだって素敵だった。


あの頃は

まっすぐで、
笑ってしまった。


今は

少し悲しい。



手紙を、
書きます。


こんなところで。



あたしは
今日も歌っていて、
ちゃんと歩いて、

大事なものを
必死で守っている。


あたしはもう、
あなたのために歌ったりはしていないけれども、

ときどき、

あなたを
歌ったりしています。



その短い、
不器用そうな指で

お返事をください。

低音を鳴らし、
あたしのいる街まで。


あなたが今、

誰のために歌っていても。





あたしが
あの頃必死で書いた、

便箋数枚の伝えたたかったことは、

今はもう、

あまり覚えていません。



いつか、
逢えたら。


その短い、
不器用そうな指で

お返事をください。



いつか、
いつか逢えたら。


そのときは、
あなたのために歌ってみたい。




それまで、

どうか元気で。



<< 前のページへ最新 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22