母は末娘だった。
兄、姉、兄、兄、兄、兄、母である。
母方の親族は祖母を尊敬し誇りに思い頼っていた。
穏やかで怒りとは無縁でありながら自分の思い通りに何もかもを切り拓いて生きた祖母。
賢いのは言うまでもないが器の大きな人だった。
経済的にも裕福だった祖母。
土地を買うと瞬く間に地価が上がりまた資産が増えてしまう。
山での厳しい修行もしたが神様に愛された人だったと思う。
神様を信じればまもってくだれるのに。と母はよく祖母に言われていた。
その言葉は母が心底から神様を信じていないことをあらわしている。
母が信じていたのは祖母だったから。
祖母の人望や経済力などに憧れていた母。
でも、それは逆なのである。
信心があったから人望があり経済力に繋がっていたのに母は大事なことを見落としていた。
母の姉である叔母もまた祖母に憧れていた人だった。
母の母と呼んでもいいくらい年の離れた姉だった叔母。
祖母亡きあと神事に精を出していたのだが邪霊に憑依され叔母の娘(従姉妹)は狐憑きになった。
本家でその事を親族が相談してから叔母の家に行くと本家で話していた内容を口にして高笑いしていた従姉妹。
何かを飛ばし本家に来ていたらしい。
雨戸を締切り真っ暗な部屋で意味不明なことを呟き油揚げばかり食べていた。
才能や素質のない者は血族であっても跡継ぎにはなれないのである。
妹や弟は才能や素質があっても自分の考えと意志で跡継ぎにはならない。
私を含むて兄弟姉妹は祖母を尊敬しているが憧れてはいない。
祖母は祖母であり私は私だから。
この人生は私の為のものであり私が主役だから。
私は学び経験しこの私の人生を生ききる為に産まれて来たのだから。