明日は7月7日、七夕ということでそういう感じのお話です

後編は明日公開しますねー


そして、今日はバスラですね!

行かれる方は楽しんできてください(^^)






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白石side






"ななね、引っ越すことになった"






授業中、前の席の七瀬から渡された紙の片隅。


少し震えた文字で控えめに書かれていた。




七瀬らしい綺麗な字。


見慣れた字は私を余計に動揺させた。






いつ?


なんで?


どこに?






聞きたいことはたくさんあるけど、うまく考えがまとまらない。


だから、私は一言だけ紙に書いて返した。






"放課後、この教室で待ってて"























「ああ、もう……」






どうして、こういう日に限って雑用を押しつけられるんだ。






急いで用事を終わらせて教室に向かえば、七瀬はいつもの席に座って肘をついたまま、ぼーっとしていた。






「七瀬?」


「……あ、まいやん」






待ってたで、と優しく微笑んだ顔には微かに泣いた跡があった。






「ごめん、待たせて」


「ううん、大丈夫」






ガタガタと椅子を引きずって、七瀬と向かい合わせになるように座る。






「……その、それで」


「うん?」


「本当に引っ越すの?」


「うん、本当。大阪に戻ることになった」






淡々と語られる言葉に、少し口が歪む。






「……いつ?」


「……7月7日」


「えっ、明日?」


「……ごめんなぁ、なながもっと早く言えれば良かったんやけど」






そう言って、七瀬は少し俯いた。






「……いざ、言おうとすると言えんくて」


「……」


「だって、こんなこと言うたらまいやん泣いちゃうやろ?」


「うっ……」


「まいやんはななのこと、ほんまに大好きやもんなぁ」


「うん……」


「ごめんな、付き合って1ヶ月しか経っとらんのに……」






七瀬の誕生日に付き合い始めた私たち。


2年ほどの片思いを経てからの念願の交際だった。


なのに……






「……七瀬が悪いわけじゃないから」


「まあ、そうなんやけど……」






頭では分かっていても、やっぱり心が追いつかない。


夏はどこにデートに行こう、とか真剣に考えてたのがバカみたいだ。






「まいやん」


「……ん?」






七瀬に呼ばれて顔を上げると、すっと頬に手を添えられる。






「……ほんまに綺麗な顔やな」






近づいてくる七瀬の顔に驚いて、思わずぎゅっと目を瞑ると、唇が一瞬触れ合って離れていった。






「まいやん」


「……なに?」


「別れよ」






突然すぎて、言葉が理解できない。


ただただ呼吸が苦しい。






「……なん、で」


「なな、まいやんを縛りたくない」


「やだっ……」


「ごめん、これだけはななも譲れんから」


「いやっ」


「……まいやん」






駄々をこねる私の頭にぽんっと七瀬の手が置かれた。


そのまますーっと手櫛を通されて、指の間から私の髪が抜けていく。






「まいやん、お願いやから、な……?」


「っ……」






2人しかいない教室をオレンジ色の西日が照らす。


七瀬の目に反射した光がやけに眩しい。






「……ごめん、もう行くわ」


「えっ……」


「まだ引っ越しの準備がな、終わってないねん」


「ま、待って……」


「じゃあ……またな?」






そう言うと、七瀬は椅子をしまって、走って教室から出ていった。






「なんでよ……」






静かな教室に自分の独り言が響く。


その虚しさに涙が滲んでくる。




目から溢れた涙は頬を伝って、七瀬の机に落ちた。






「あ、しまった……」






落ちた涙を拭こうと机を見ると、七瀬が肘をついていた辺りに小さな文字がシャーペンで書かれていた。






「なんだ……?」






書かれていたのはたった1行の言葉。


それなのに、私の目からは幾筋もの涙が零れた。

































"まいやんに出会えて良かった、大好きやで"