この病院の6階に入院していた少女の話です。少女は余命3か月と言われていました。病名は、ちょっと言えません。秘密です。その少女のもとには、ときどき、友達がおみまいにきます。その日、母親は、少女をベッドの上に起こし、お見舞いに来てくれた2人の友達と記念写真を撮りました。


 

 少女は、11月の末、予想よりちょっと早く、この世を去りました。葬儀がすんでしばらくして、写真屋さんに預けてあった少女の写真ができあがりました。でも、写真が1枚足りません。あの日、お見舞いに来てくれた友達と3人で撮った写真だけないのです。デジカメのデータには確かにその写真が残されています。とってもいい笑顔で映っています。

 

 母親が写真屋に出向いて問いただすと、オヤジさんはなにやらわけのわからないことを言ってごまかそうとします。「とにかく、データはあるんだからもう1度焼き直してください。」としつこく迫ると、オヤジさんはしぶしぶ奥へはいり、母親に真っ白い封筒を手渡しました。

 

 封筒の中にはあの時の写真が入っていました。でも、その写真の少女はミイラのように痩せこけて、目は落ちくぼみ、世にも恐ろしい表情で映っていたのです。

「お嬢さんの顔だけが、何度焼いてもこうなってしまうのです。」 ・・・・オヤジさんは申し訳なさそうに言いました。

 

 たぶん心霊写真の一種だろう。そう思った両親は、ある有名なお寺で写真の供養をしてもらいました。お経を挙げ、護摩を焚き、おはらいをして供養は終わりました。

 帰りぎわに、母親が「どうしてこんな写真になったのでしょうか?」と聞くと、住職はいろいろとごまかそうとします。「なにか、かくしていませんか?」 「どうか本当のことを教えてください。」 母親が泣きながら訴えると、住職は絞り出すような声で言いました。

 

 

    残念ながら、娘さんは地獄に落ちました。