ぼくはかくれんぼが大嫌いだ。それは、小さいころ弟と2人でかくれんぼをしたときに、怖い体験をしたからだ。

 

 その日は両親とも出かけていたので、家には弟と僕しかいなかった。外は雨がしとしと降っていて、ゲームにも飽きたので、家の中でかくれんぼをすることにした。

 

 最初は僕が鬼になった。20数えて、ぼくはまず最初にお風呂場をチェックした。風呂のふたを開けると中はからだった。次は台所だ。・・・いない。トイレ。居間のカーテンのうしろ。・・・いない。

 

 その時、2階でコトッと音がした。はは~ん。2階の子ども部屋だな。押し入れの中かな?・・・・いない。・・・そこで僕はいつもは入らない両親の寝室にも入ってみた。ベットの下、机のかげ、ベランダ・・・・。いない。

 

 また、コトッと音がした。みると、そこには観音開きの扉の付いた大きな洋服ダンスがある。扉を開けると中には父の洋服やコートが何枚も何枚もかかっている。「このおくだな」と思った僕は洋服の中にそおっと手を入れた。何かが僕の手をぐっとつかんだ。引っ張られたので、僕は弟を見つけたと思って引っ張り返した。でも、びくとも動かない。洋服のせいで中が良く見えないので、僕は「見つけたぞ。早く出てこいよ。」と叫んだ。

 

 そのとき、うしろから「お兄ちゃん、何してるの?」と弟の声がした。振り向いて弟の顔を見た瞬間、背中がゾワゾワっとした。そして僕はそれまで生きてきて1番の力を出したと思う。思いっきり引っ張って手を振りほどいたとたん、勢いでベットの横に倒れこんだ。・・・タンスの中から「ちっ、もう少しだったのに。」という声が聞こえた。

 

 その夜、僕があまり怖がるので、両親はタンスの中の洋服を全部はずして中を見せてくれたが、もちろんそこには何の痕跡もなかった。